ウツボちゃんの毒 〜1〜 ページ1
Aが突然いなくなって一週間が過ぎた。
フロイドはずっと元気がない。
部活にも出る気力もなく、授業が終わるとフロイドは毎日オンボロ寮へ直行する。
「フロイド」
園庭を歩いているとアズールに呼び止められた。
「ああ?」
「そろそろ、オクタヴィネル寮に戻ってくれませんか?」
「……イヤだ」
「では仕方がありませんね。フロイド。オクタヴィネル寮へ戻れ。これは寮長命令です」
アズールが事務的な口調で言い放った。
「何でだよっ!」
「寮長命令は絶対ですよ。この一週間はそっとしておいてあげましたが、部活はサボる、何もしない。ろくに食べもしない。そんな寮生を寮長が放っておく訳がないでしょう?」
「小エビちゃんが帰ってきたらどーすんだよっ」
「Aさんがこの学園に来たときは園庭にいましたよね?必ずしもオンボロ寮に戻るとは限りませんよ」
「………」
「闇の鏡がAさんをうちの寮生として認めているのですから、フロイドはいつも通りの生活をして待つべきです」
「うるせぇなぁっ。オレが小エビちゃんに気づくの遅れてまた襲われそうになったらどーすんだよ」
「Aさんが心配なのは分かります。ですが、今Aさんはこの世界にはいない。僕にとったら、目の前にいる寮生であるフロイドを心配するのは当然です。今夜からオクタヴィネル寮に戻りなさい。それと、モストロ・ラウンジの当番も復活してもらいますから、そのつもりで」
「チッ…」
「今のは聞かなかった事にしてあげましょう」
アズールはスタスタとフロイドの元を去って行った。
寮長の命令は絶対だ。
例え幼馴染みでも、アズールの命令にはフロイドも従わなければならない。
「クソッ」
ムシャクシャしながらフロイドはオンボロ寮へ歩いて行った。
寮に着き、オクタヴィネル寮へ戻る準備をダルそうにする。
オンボロ寮はそのまま開放されることになる。
フロイドはAの制服を持っていくことにした。
また変態が侵入しても、Aの物がないように。
「ウツボちゃんも、連れてってあげるね…」
大した荷物も無いが、ウツボの抱き枕がかさばる。
フロイドは重たい足でオクタヴィネル寮へ戻った。
それから更に一ヶ月が過ぎた。
Aは戻って来ないものの、フロイドはアズールの口うるさい命令のせいで、普通の生活を強いられていた。
昼休み。
「フロイド。今から学園長のところに行きますよ」
アズールに突然呼び止められた。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時