オスマンside ページ16
『ま、さか、おまえ.......』
そう言って、俺の胸に倒れ込むA。
その瞬間、大好きな懐かしい匂いが俺の鼻をくすぐった。
オ「.......A」
兄「いや〜、やっぱ恐ろしいな。手ぇ置くタイミングで睡眠薬注射とか」
オ「そう？でもこうでもせんと、A戻って来てくれないめう。
グルッペンにも「無理矢理にでも連れて来い」って言われとるしな」
兄「ふ〜ん。
......いやでも、ほんまに良かった。Aも生まれ変わっててくれて」
オ「そうやな」
愛しそうにAの髪を撫でる兄さんの手を退かし、寝息を立てるAを横抱きする。
兄さんが悔しそうな顔したけど、そんなの知らないめう。
ふと下を見ると、前世よりも幼い寝顔が間近に迫って、沸々と愛しさが沸き上がってくる。
けど、さっきのAの顔が脳裏にチラついて、酷い後悔がその気持ちを押し潰す。
あの、俺に怯えて震える瞳。
「エリザベス」から「A」になった瞬間、瞳から消える光。
自嘲を含んだ微笑み。
もう俺等と関わる気はないと遠回しに告げる、あの苦しそうな顔。
見てるだけで、後悔で心臓が潰されそうになった。
ほんまに、何で俺等はあの時、あんな事を......
グ「遅かったな、オスマン」
オ「めっちゃ警戒されてなぁ。
ゾムは大丈夫なん？」
グ「ああ。さっき泣き止んだゾ」
後悔で軋む心臓を押さえながら、村の外れに置いてある馬車へ歩く。
そこには、ランタンを手に、馬車に背を預けるグルッペンの姿があった。
そんな姿からさえも威圧感というものが滲み出とるのは、やはり流石としか言えん。
先程のAの言動を報告し始めた兄さんを尻目に馬車に乗り込むと、目を赤く泣き腫らしたゾムが、待ってましたと言わんばかりにAに抱き付いた。
ゾ「A、A.....！」
ト「......寝る時に眉間にシワ寄る癖、生まれ変わっても直っとらんなぁ」
オ「ほんまにな」
座席に座っとったトントンもAに近寄り、シワを刻むAの眉間に指を当てて苦しそうに笑う。
Aにこんな癖を付けてしまったのは、Aの父親。
毎日毎日、「躾」と称した虐待を.......
やめよう。
これ以上後悔を思い出したら、気が狂ってまう。
オ「グルッペン、そろそろ行こうや。Aが冷えてまうで？」
グ「あぁ、そうだな」
ごめんな、A。
お前はこの村が好きなのかもしれんけど、俺等はAがおらんと生きていけんねん。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
