四季紡ぎ。 (ページ8)

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出陣【柄長正幸】ページ8

　静まり返った自室に、夏班班長、早川綾音の声が響いた。
　我々、季寄せ二期生の初陣の時を告げるその言葉に、俺は装備の最終確認を行う。

　それにしても、四季紡ぎとは不思議なものだ。
　誰もが必ず耳を傾ける声に、花びらで武具を作る能力。
　政府は一体、どうやってこんな物を人間に付与したのか……。あの時、麻酔で眠ってしまったことが悔やまれる。
　私に意識が残っていれば、その瞬間を目にすることも出来ただろうに。

　廊下をパタパタと掛けて行く足音がする。
　同じように声を聞いた四季紡ぎだろう。

「……よし」

　必要な物は全て持った。
　自室を出て、私も転移所へと向かって歩き始める。
　この戦いで自分の持つ能力が、どの程度破壊者に通用するのかも分かるだろう。
　あわよくば、破壊者のサンプルも手に入れたいくらいだが……多くは望むまい。

　なんと言っても初陣だ。
　怪我なく帰還することを、今回の目標にしようじゃないか。

「ん？」

　ふと廊下に目をやれば、何やら数枚の紙が落ちている。
　ポイ捨てか？と思ったが、ゴミにしては綺麗だ。
　拾い上げてみれば、どうやらそれは楽譜のようだった。

　落し物だろうか？
　全て回収して、再び歩を進める。
　後で時鳥の力を持つ彼女にでも届けておこう。
　俺が自分で落とし主を探すよりも、彼女に頼った方が効率的だ。
　