妹が好きで何が悪い２【プリレジェ】

ep22　天堂光輝 ページ47

光輝side


A――


彼女の名前を呼ぶ声は喉の奥で詰まって出ることができなかった



今朝学校に行けば何やら騒がしい学園内は「ヤンキーが来た」という海司と陸の言葉でその理由を知った

校庭を見れば学ラン姿の二人は玄武高専で、ヤンキーが何しに来たんだよと呟いただけで教室に入った


「ヤンキーヤバくね？何しに来たんだろ」
「知らね。あぁいう奴らの考えてることとかわけわかんねぇし」
「どうする？映画みたいになっちゃったら」
「バーカ。んなことあるわけねぇだろ。あ、つか自転車に携帯忘れた」


教室で海司達と話をしながら鞄を開ければなかったそれは、多分自転車のホルダーだ


「取ってくる」
「気を付けろよ、ヤンキー」
「平気だよ」


そう返して教室を出ると駐輪場へと向かった

階段を下りて廊下を歩いて、すると向こうからやってきたのは先ほど見た玄武高専の一人で


「何しに来てんだよ」


すれ違いざまに小さく呟いた声はそいつの足を止めた


「妹、探してんだよね」
「は？」


振り返ればポケットに手を突っ込んだまま俺を見るソイツ


「ロイヤルフェニックスなんだけど、お前見てねぇ？」


ロイヤルフェニックス学園……Aが通う学園だ


「ヤンキーの妹がロイヤルフェニックスって……」
「で？見たの？見てねぇの？」
「知らねぇよ」


まさか、なんて一瞬だけ過ったけれど、そんな偶然まさかありえるわけない

だからヤンキーにそう返して駐輪場へと急いだ


けれど――


駐輪場で携帯を手にした後戻る途中

彼女を見たんだ

しかも何故かうちの生徒会長と玄武高専の二人と一緒にいる姿

Aはあのヤンキーの妹だったんだ

けど、そんなこと今はどうでもよくて

また会えたことが嬉しくて声を掛けようとした

が


「こいつ、俺の女だから――」


確かに聞こえた言葉

同時にあの時彼女が言っていた言葉を思い出した


――好きだって言われたの――


それは、兄貴のことだったのか……？

ドクリドクリと何故か心臓が煩くて

俺の彼女を呼ぼうとした声は喉の奥で詰まって、結局出ることができずに彼女は去って行った

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