妹が好きで何が悪い２【プリレジェ】

▽　天堂光輝 ページ21

夜の外は少し肌寒くて着ていたパーカーのチャックをしめた

どこに行きたいわけでもなくて、ただひたすら歩いて辿り着いたのはたまに通る公園だった

静かなそこで微かに聞こえる虫の音に足を踏み入れて

ぐちゃぐちゃになった頭を冷やそうとベンチを求めて奥へ歩いて行けば聞こえた音楽

なんとなくその音に誘われて歩みを進めれば、そこには男の子が三人ダンスを踊っていて

見覚えのある赤い髪の男の子は前に助けてくれた人だ。名前は天堂さんと言っていた

そういえばいつもこの公園でダンスの練習をしていると言っていたっけと思い出して

街頭の下で踊る彼らを目に映しながらベンチに腰を下ろした

ダンス部なのだろうか

とても上手で、一生懸命練習する姿はさっきまであった色んなことを忘れさせてくれた

私に気付かない彼らは、きっと見られてると知ったら嫌がるだろう

だからあと少しだけ見たら他のベンチに移ろうと思った矢先


『あ……』


バッチリと目が合ったのは天堂さんで、彼の動きが止まるとどうしたのかと他の二人も止まってしまって

邪魔をしてしまった

それに見られたことにきっと嫌な思いをしただろうと何もなかったかのように立ち上がれば


「待って！」


静かな公園に響いた声とこちらに駆けてくる姿


「ここで、何してるの……？」
『ご、ごめんなさい。勝手に見ちゃって。たまたまここに来たら踊っているのが目に入って――』
「全然！そんなの全然いい！いや、まさかこんな時間に会えるなんて思わなかったから……」


するとシンと静まり返ってしまった空気に、彼もダンスの練習があるだろうし去ろうかと思えば


「ッ、行かないで」


突然掴まれた手


「あ、いや、これはその……」


視線を泳がせる彼に私もどうしたらいいのかわからなくて


「よかったら、少し話さない……？」


そんな言葉を放った彼に驚いた


『え、あ、でもダンスの練習……』
「あー、休憩？」


チラリと他の二人に視線を送った彼


「Aちゃんさえよければ」
『えっと、じゃあ……休憩の間少しだけ』


きっと気を遣ってくれたのだろう。けれど彼の厚意に少しだけ心が軽くなった気がした

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