妹が好きで何が悪い２【プリレジェ】

▽ 鏑木元 ページ14

元side


バタンと扉が閉まると車が発車した

先程と同じ俺は助手席で、奏様の隣にA、その前の誠一郎さんの隣に乗った京極弟はあからさまに不機嫌だった

今日は学園を出た後、とあるパーティーに呼ばれていてその帰りだった

街頭が光る暗い道を車で走っていれば見覚えあるシルエットが見えて

真っ白いロイヤルフェニックスの制服はすぐにAだってわかった

そして次の瞬間、彼女の目の前にいた男、京極竜の顔がAに近付くと


「止めてください！！」


反射的に叫んだ声と助手席から思いっきり鳴らしたクラクション

慌てて車を止めた運転手に、奏様と誠一郎さんの声を無視して車から出た

そこには驚いているAと京極竜がいて、自分が思っていた以上に出た低い声


何しようとしていた？

仮にも兄弟だろ？

沸々と怒りという感情が湧き出るのがわかった


幸い奏様達には何があったのか知られなかったが、俺が気付かなかったら本当にしていただろうと思うとまだ怒りが収まらない


「こんな時間に何してたんですか？」
『今日は美容室に行ってたんです』
「そうだったんですね。確かに髪がサラサラですね」
「触んな」

奏様との会話に聞こえたのは京極竜の低い声で


「ごめんA、嫌だったかな？」
『い、いえ、そんなことないです』
「彼女は嫌がってないようだけど」
「あ？」


振り返れば睨みあっている二人


「遠くの美容室まで行ってたんですか？」


だから口を挟めばAと合った視線


『ううん、バイト先の近くで』
「そういえば今日はアルバイトじゃなかったんですね」
『はい』
「今度Aのアルバイト先も行ってみたいです！」
『い、いえ！なんか恥ずかしいので…』
「あ、だったら今度アルバイト先まで迎えにあがり――」
「いらねぇよ。俺が行くから」


奏様の言葉を遮ったのは当然京極竜で


「余計に危ないんじゃないの？」
「ア？」


鋭い視線が重なった


『ちょっと竜ちゃん』
「……」
『ごめんね』


眉根を下げるAに


「もう着くぞ」


誠一郎さんのそんな声と止まった車


『送っていただいてありがとうございました』
「少しでもAに会えてよかったよ」


車から降りるとそんな会話をして頭を下げたA



「鏑木、今日のお前どうした」


そんな二人を視界に映しながら隣に立つ誠一郎さんの視線はそのままで


「……別に、どうもしないですよ」


僕も同じように声だけでそれを返した





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誠一郎さんも元呼びだと思うのですが、鏑木呼びにさせていただいております

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