【立海】最悪なキスを君に。final【嫌われ】

82、ココア ページ14

｢A、一緒に帰ろうぜぃ♪｣

そう話し掛けられたのは、皆と別れた後だった。

―――ブンちゃんの方から誘われたの、初めてかも。

なんて、暖かい嬉しさを押し込めながら、大きく頷いた。


ブン太｢流石に夜になるとさみぃな〜｣

『もう秋だね〜(*´∇｀*)』

何の変哲もない会話だけれど

ひとつひとつに、心がきゅんと甘酸っぱくなるような気がした。


｢久しぶりに、寄ってかね??｣

ブンちゃんがそう言って立ち止まったのは、いつかの公園。


『ひゃ〜…暗いね;』

街灯の数本しか無い公園は、昼とは全く別の表情を見せていた。

ブン太｢だな〜＾＾;
俺ちょっと飲み物買ってくる。ここで待ってろい｣

『え…うん』

さっと闇に溶けて行く背中を見詰めながら

追い掛ける事も出来ず、近くにあったベンチに座った。

前、ここでブンちゃんとアップルパイを食べたっけな。

そんな回想を繰り広げる頭に、遠くで静かに打ち寄せる波の音。


ブンちゃんはまだかな。


次第に眠気が襲ってきて、私はうとうと微睡んだ。

―――――――――――――――――
『…ん?』
しまった!!寝ちゃってた!?

ブン太｢お目覚めか?笑｣

いつの間にか隣にはブンちゃんが座っていて、悪戯に笑いながら私にココアを差し出した。

ブン太｢やる!｣

『あ、ありがとう』

ホットココアは、冷えた手にはちょっと熱い。


『｢………｣』

会話をするでもなく、二人並んでココアを飲む。

今日は星が綺麗だなぁ。


｢なぁ、A｣

『んー??』

｢お前が入院してた時、
俺がお前の事好きだって言ったの、覚えてる?｣

『………!!』


―――覚えてない筈、無い。

ただ

あれが狂った私を宥める為に放たれた言葉だったら

仕方無く言った言葉だったらどうしようって思ったら

怖くて

恐くて。

ずっと触れない様にしてきた。


｢裏切っといて…見棄てといてなんだって感じだよな…｣


私はただ、首を横に振る。
声、出ないよ。


｢…今更遅いかもしんねーけど


･


俺は、Aが好きだ｣


『………ッ』

駄目だよ

…そんな言葉、ずるい。


｢…まーた泣くのかよ｣

私を見て、ブンちゃんが小さい溜め息をついた。

｢俺、お前の泣くとこ


――――もう見たくないんだけど｣


気がつけば

睫毛が触れてしまいそうな位近くに

大好きな、ブンちゃんの綺麗な瞳。

さっきまでの肌寒さは消えてしまった。


まだ半分残っていたココアが、無機質な音を立てて倒れ


渇いた砂に宇宙を描いた。

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