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「……ちょっと待ってろ」
一瞬、目を見開いてから
中也は足を進めるスピードを少し早めて、バルコニー最奥のベンチにふわり、優しく私を降ろしてくれた
「……ごめん」
その一連の流れの合間、何だか私は、やたら手持ち無沙汰に感じて
胸の中に何となくあった言葉をポツリと、中也の耳へと届けてみた
「何で手前が謝んだよ」
すると、帽子を被り直しながらの、そんな返事が一言返ってくるから
「だって、一人で行動して、勝手に嫌な目に遭ったくせに、中也に助けてもらった」
視線を大きく外しつつ、悪事を白状するが如くの歯切れの悪さで、返事に返事
星空を背景に、中也はその蒼眼で私を一瞥すると
「男に絡まれたのは仕方ねえだろ、手前があまりにも綺麗なんだからよ」
さらりと、さも当然のように、中也は何食わぬ顔で私に云い返した
___が、私が素直に受け止められる筈はない
不意な優しさとか、そういうずるい言葉とか、本当に反則だと思う
響き始める心音が、悔しいし、憎たらしい
「手ェ握るんだろ」
中也の問い掛けに頷き、ぱっと視線を戻して
それから、私は何てことをお願いしてしまったのかと激しく混乱した
その口もとに手袋を咥え、手から外して、顕になった男のくせに艶やかな素肌の手
そんな中也の手が、私の手に添えられる
「これで良いのか?」
「__あ、う、うん」
手袋の外し方一つ取っても、呆れるくらいに妖美で目を奪われた
直に触れる中也の手は温かい
ゆっくり、指を絡めるようにして、手と手が重ね合わされていく
「俺は怖くねえのか」
「……ん、怖くない」
「ふぅん…」
中也が怖い、とするならば
それはいつの間にか、こんなにも私にとって大きな存在になってるところ、だろうか
いや、柄にも無いことを考えてしまった
一人でに恥ずかしくなって
「こ、今後は気を付けマス……」
変に片言な言葉遣いで、反省を述べる
だけど私の手を握ったままの中也に「いらねえよ」とすぐさまそれは一蹴された
「手前は何も気にすんな、お得意の情報集めにでも勤しんでやがれ」
ぎゅっと手を握る力が強くなって、中也の大きな手の温もりが私の手を包んで、私の手に伝わって
「これからは絶対、俺が守ってやっから」
不覚にも、ときめいてしまった
「仕方なくだからな」なんてそんなの、熱く荒ぶる心臓の気休めにもならないよ、莫迦
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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