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「___う、わ」
用もなく駆け込んだトイレで、鏡に映った私の姿が見えてしまった
耳まで真っ赤に染めた私の姿が
「訳判んない…!」
何でこんなに顔が熱いのか
何で胸がざわついて止まないのか
___何で中也は、あんなに恰好良いのか
「私のこと、莫迦にしてばっかなくせに」
自らの呟きに自ら心の中で頷き、口を尖らせる
これは、ほら、あれだ
男の人にああいうの、云われたこともされたこともなかったから、過剰に反応しちゃったんだ、きっと
無理やりでも何でも、そうやって胸の高鳴りを納得させなきゃやってらんなくて
本当は用なんてなかったトイレを後にした
___のは良いのだけど
見渡す限りに屯う人混みの中、中也を探すどころか歩くのさえままならず
「ナカハラの嬢ちゃんじゃねぇか」
「あ、どうも…」
「情報屋のナカハラさんですよね?」
「そうですけど…」
少しでも人気のない場所を求めて足を進めるも、多方面から何度も声を掛けられて
その都度、挨拶を交わしたり、情報の取り引きをしたり、忙しないことこの上なかった
「___うああぁ、パーティーって疲れる…」
やっと辿り着いた、静かな廊下
メインホールから死角になってるそこは、人通りもなくがらんとしていて
此処でちょっと休んでよう
中也には後で連絡すれば良いや、彼方も彼方で、マフィア幹部としての顔があるだろうから
なんて思い、壁に体を預けて佇んでいると
「あれあれ? お嬢さん、お一人?」
わざとらしい言葉遣いで、若い男が私の視界へと入ってきた
スーツの着こなしはどことなくチャラく、いかにもボンボンって感じの出で立ちだ
男は安っぽく笑って、私の顔を覗き込み
「なら、俺と遊ばない?」
ネクタイを緩めながら私を誘った
男が何処の誰なのかも、『遊ぶ』ことが何を意味するのかも、よく判らなかったけれど
___何となく、嫌だと感じて
「えっと、お断りします」
そう云った途端
男はあからさまに眉をひそめ、不服そうにぐんと距離を詰めてきて声を荒らげた
「遊ぶだけだから!」
「___やっ!」
思わず声を上げてしまった
だって何だか、私の腕を掴んで離さない男の手に強い嫌悪感が走って仕方ない
誰か、助けてくれるような紳士は居ないのか
本当に誰でも良い、誰か
___助けて、中……
「可憐な女性に乱暴はいけませんねえ」
それは、期待していたのとは違った声だった
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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