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鼻につく香り、計算された笑み
それからむやみやたらな色気
ああ、ウザってえな
「中原様、私とご一緒して頂けません?」
彼奴をこの手から逃がしてしまった俺に、女はそう云って笑いかけてくる
悪いがそれどころじゃない
このまま彼奴を一人にして、変な虫でも付いちまったらどうすんだ
着飾った今日の彼奴は
____Aは、花みてえに綺麗なんだから
「彼女がお手洗いから戻ってらっしゃるまでの間だけでも、駄目かしら」
他意も故意もバレバレな上目遣い
まだ何も云ってねえ俺の腕に、女が絡めてくるそれは先手必勝と云わんばかりで
強請るような目を向けてくる女を相手に
「……中原様?」
俺は帽子に手を当て、小さく笑いを零した
「残念だが、俺には彼奴だけなんだ」
思えば、Aに一目惚れだったのかもしれない
口を開きゃ悪態ばっかの、あんな莫迦女だが、彼奴以外の女に興味が湧かねえのもまた事実
「ってことで、失礼するぜ」
「あっ、中原様…!」
どんなに大層なドレスを着たって、優雅な言葉遣いで振る舞ったって、彼奴を心に決めた俺には意味を成さない
誰もAにゃ敵いやしない
帽子をひらひらと振り、女に軽く会釈してから、俺は見えなくなった彼奴の姿を追った
「確か、トイレっつってたっけか」
一旦ロビーに出て、彼奴を探して辺りを見回す
人、人、人で溢れ返るきらびやかな空間で、男も女も皆酒を片手に話に花を咲かせている
人混みの中を進みながら、彼奴の手を握っていた自分の手へと視線を落とした
手袋越しに伝わった彼奴の温もり、それだけで煩い心臓を宥めるのに必死で
手馴れた筈だったエスコート術も、惚れた女相手じゃ訳が違って
内心後で、何で素手で握らなかったんだって、後悔したりもした
「……居ねえのか?」
トイレのそばの少し空いた壁際のスペースにて、待てども待てども彼奴は現れない
あんなに艶めかしく粧した彼奴を、俺が見逃すなんて有り得ねえし
だんだん不安と苛立ちが胸を埋め尽くしていく
「俺から離れんなっつったろうが……」
あんの莫迦女、勝手にどこ行きやがった
呆れるくらい自由な奴だな、くそ
ああ、もう本当
_____俺の気も知らねえで
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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