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「そ、そんなの」



形の綺麗な太宰さんの手の中

目を見張る私は、彼の視線に捕らわれたまま



「判んないじゃないですか」



震える喉から出た声は、それもまた同じく

探偵社の入り口の真ん前である筈のここは、いつからか音がなくなって、私と太宰さん二人の世界となったような感覚を覚える



「それが判るのだよね、私には」

「確かに、太宰さんの予言がいつも中る、のは知ってます……けど」



私が太宰さんに告白?

夢に見ることさえ出来なかった、だって

そんなの出来るものなら今頃



「じゃあ君は、どうして私の予言が中るのか知ってるかい?」



へ、と、相変わらず間抜けな私の相槌

見上げる太宰さんはにっこり笑って、それからその優しい声で、静かに述べる



「予言が必ず叶うように、私が仕組んでるからさ」

「太宰さんが……?」



頷く太宰さんの、その瞳は一瞬だけ、先見の知を孕み鋭い光を放って見えた

手は添えられているだけなのに、振り払って顔を逸らそうとは踏み切れなくて



「だからAちゃん、君が必ず私に告白するように、私は仕向けるつもりだよ」



蕩けてしまいそうな笑みを携えながら、何てことないようにさらりと、云い渡されたとんでもない一言

妖しさを増す表情は、どこを取っても私を落ち着かせてはくれない

触れられてる頬だって熱くなる



「……ずるいです、太宰さんは」



そんなこと云われたら

期待、してしまう




「ふふ、先に期待させたのは君の方だろう」




密かに思った筈の心の呟きは、筒抜けだった

口に出してもいないのに、心の中までお見通しな太宰さんには敵わない

太宰さんが私に何を期待するって云うんだ、私はこんなに、素直じゃない嘘吐きなのに

けれど胸の奥は正直で、音が聞こえてバレちゃうんじゃないかってくらい大きく高鳴る



「さて、Aちゃん」



そんな私を呼ぶ声にハッとする

頬にあった太宰さんの手は、いつの間にか、私のそれを攫っていて

離す気を見せない力強い温もりからしてつまり




「そろそろ帰ろうか、家まで送るよ」




一緒に帰るのは、もう、決定事項だった



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桜月(プロフ) - 完結、おめでとうございます!!太宰さんの仕草や言動のひとつひとつにすごく胸がきゅっとなって、、めちゃめちゃキュンキュンしました!とても読んでいて楽しかったです!! (2021年10月11日 0時) (レス) @page28 id: cb743e60b6 (このIDを非表示/違反報告)
千桜里 - はじめまして!太宰さんの心情や行動にとてもドキドキしました!!本当に面白かったです! (2020年9月29日 12時) (レス) id: d647e09f50 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタ娘(プロフ) - はじめまして。ヲタ娘です。すごく胸がキュゥ……として、フワフワっとしました! とっても面白いです! (2019年3月4日 20時) (レス) id: 737d873cb6 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 完結おめでとうございます!リクエストよろしければその後の話が読みたいです。お願いします。 (2018年3月7日 6時) (レス) id: 54de0e772b (このIDを非表示/違反報告)
月ノ輪(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく可愛くて胸きゅんばっかしでした!他の作品も楽しみにしています♪ (2018年2月22日 13時) (レス) id: 3aab0973d9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月28日 2時

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