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「___すき」
ああ、それがどれくらい嬉しいのか、判ってなかったのは自分の方かもしれない
広くない部屋に私と彼と二人、そんな空間の中で、響くのは私の声一つ
「太宰さんが、好き」
云いたくても云えなかった言葉が、たった二文字のその言葉が、今になって口から零れ落ちた
一度声に乗せてしまえば、もう、止まらなかった
「嘘吐いてごめんなさい、本当は、太宰さんのことが好きなんです」
恥ずかしくても、照れくさくても、例え後で振られてしまうのだとしても
この衝動に、この
これ以上後悔し続けたって意味ないのだから
「包帯アレルギーなんて莫迦なこと云って、ずっと自信がなかっただけでした」
自信がないのは今この瞬間もだけど、そんなの上回るくらい私の気持ちが大きいことも
「私はやっぱり、太宰さんが好きで、いつまで経っても諦められなくて」
変な出任せで遠ざけるつもりが、結局は太宰さんから離れられなかったことも
「だから、今、云います」
" 私は太宰さんが好き "
遠回りし過ぎたけれど、やっと云えた
包帯アレルギーを嘘だと認めた、それはつまり治ったのと同じ意味で
その上私は、太宰さんに告白までしてしまって
ああ本当に、何から何まで予言の通り、そもそも太宰さんの唱えることに疑いようなんてなかったんだ
私が好きになった人は、そういう人だったっけ
「あ、えっと、でも、よく考えたら、私莫迦ですよね! 包帯じゃなくて、太宰さ」
" 太宰さんアレルギーにすれば良かった "
そう云いかけた言葉の続きは、強引な口付けにより塞がれて、喉の奥へと飲み込まれた
「ん、だざい、さ……っ」
角度を変えて、吐息を交えて、繰り返されるキスは私を幸せな熱で染め上げる
「云わせないよ、そんなこと」
唇が名残惜しそうに離された直後、太宰さんは再びその瞳の中にしっかりと私を映し込むと
ゆっくりと息を吸い直してから、しばらく閉ざしていた口を開いて
「包帯なんて莫迦な云い訳までなら許してあげる、でもねAちゃん
_____君が私を嫌うのは、絶対に許さない」
甘い微笑み、さり気なく取られた手
云い聞かせる声音はいつも通り優しい
けれど、私を捕らえた鶯色の瞳は、今まで一番真っ直ぐな眼をしていた
「だって私も、Aちゃんが好きだから」
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桜月(プロフ) - 完結、おめでとうございます!!太宰さんの仕草や言動のひとつひとつにすごく胸がきゅっとなって、、めちゃめちゃキュンキュンしました!とても読んでいて楽しかったです!! (2021年10月11日 0時) (レス) @page28 id: cb743e60b6 (このIDを非表示/違反報告)
千桜里 - はじめまして!太宰さんの心情や行動にとてもドキドキしました!!本当に面白かったです! (2020年9月29日 12時) (レス) id: d647e09f50 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタ娘(プロフ) - はじめまして。ヲタ娘です。すごく胸がキュゥ……として、フワフワっとしました! とっても面白いです! (2019年3月4日 20時) (レス) id: 737d873cb6 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 完結おめでとうございます!リクエストよろしければその後の話が読みたいです。お願いします。 (2018年3月7日 6時) (レス) id: 54de0e772b (このIDを非表示/違反報告)
月ノ輪(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく可愛くて胸きゅんばっかしでした!他の作品も楽しみにしています♪ (2018年2月22日 13時) (レス) id: 3aab0973d9 (このIDを非表示/違反報告)
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