【文スト】包帯アレルギー

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どれくらい経っただろう

何となく、とても永かった気がする、けれど実際のところは時間にして大体二十分だった



「……んんん」

「あ、太宰さん、起きました……？」



私を抱き枕に太宰さんが眠りに着いてからしばらく

何故か私に回された腕は離れなくて、視界の端に映る彼の寝顔を眺めるしかなかった

自分のうるさい心音と向き合うばかりの時間は



「ああ、寝てしまっていたのだね……」



寝起きな彼の掠れ声が終わりを告げた

太宰さんの手が、ところどころ寝癖の付いてしまった髪を無造作に掻き上げるために私を放す

その隙に太宰さんの膝の間から飛び退いた



「ん……どうして逃げるの？」

「ち、近過ぎたので！」

「近過ぎたら、いけない？」

「だって、私たち、ただの同僚ですし……！」



そう、ただの同僚なのだ

きっと私だけが一方的に想っているだけの、釣り合いの取れてない同僚

とか何とか、わざわざ自分で辛くなるようなことを思っては密かに胸を痛めていたのに




「じゃあ、それ以上の関係になれば、もっと近くても逃げないかい？」




なんて云われたら、もう、何も判らなくなる

それ以上の関係って？ もっと近くって？

そんな台詞を投げ掛けられて、一体私はどう答えれば正解なのか

困ったことに、駆け引きは得意じゃないのだ



「……それ以上の関係なら、逃げる理由もないんじゃないですか」



だから、これが私の精いっぱいの回答

と、直後、太宰さんの手が頬に触れて

その時袖口からさらけ出された手首は、いつもと違って隠す包帯がなく、思わず視線を大きく外した



「そうだね、君の云う通りだ」



その、外した視線を、顔ごと

包み込んだ両手に上を向かせられて、無理やり太宰さんの方へと奪い取られて



「けれど君が今、私から目を逸らす理由もないと思うのだけど……ほら、こっち向きなよ」



私は巧みに、太宰さんの云いなりにさせられて

理由はないかもしれなくたって、どう考えても同僚の距離感でもないだろうに



「ねえAちゃん、知ってるかい？」



構わず進められる話、何も口を挟めないままの私



「私が包帯を解いた姿を見せるのも」

「そばに居て私が安心して眠れるのも」



太宰さんの声が紡ぎ出す、その一言一言が私の鼓膜を揺らし胸も揺さぶる




「全部、君だけなのだよ」




笑みを携える、特別感に溢れた言葉

私がどれだけ嬉しいか、太宰さんは判って云ってるんですか？



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