【文スト】包帯アレルギー

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髪をタオルに晒し、適当なシャツに袖を通し

風呂上がりで幾分か熱の高い体のまま、彼女を待たせていた部屋へ、足早に顔を出した



「ちゃんと温まりましたか？」

「んー、まあね」



今さっき浴びたお湯も、彼女が気を利かせてくれたのだろうこの部屋も、朝に身を預けた川の水なんかよりはうんと温かったけれど

彼女に触れた時の温もりを思えば、物足りなくて敵わなくて、不思議なものだと内心苦笑いを零した



「お部屋、勝手に暖かくしちゃいました」

「うん、有り難う」

「後、温かい呑み物も」

「有り難う」



遠慮がちに差し出されたコップを受け取る

一口傾ければじんわり甘い熱と香りが広がった

Aちゃんが入れてくれただけで、こんなに美味しくなるものかと

ただのホットミルクに思わず感嘆した、けれど



「えっと、それから」

「ねえ、良いから早く抱き締めさせて」

「へ、わっ、ちょ……！」



私が一番欲しいのは、Aちゃん自身だから

返事を待たずに＿＿否、待てなかったのか＿＿私より随分と小柄な君の体を攫って、ソファへなだれ込むように腰を下ろす

ああ、これでようやく、心の底から一息つけた



「太宰さん、まだ髪が濡れて」

「冷たかったかい？ ごめんね」

「そういう問題じゃないです！」



何のために温かくしているのか、なんて、そりゃあ君が風邪を引かないように云うからだけど

引いてしまったらその時はその時だ

君に看てもらえるならそれもまた良いじゃないか




「それに私、今、包帯を巻いていないのだよ？」




腰に手を、耳もとに唇を、そっと添えて囁いた

途端に赤く色付く可愛らしい君、これが私だけのものなら良いのに

だって君を待たせていると思ったら、包帯を巻く時間すら煩わしくて、衣服のみに身を包むしかなかったんだもの



「包帯がないのだし、私がいくら君に触れようと問題ないだろう？」



わざと意地の悪いことを声に出して、いつもよりずっと強く、思い切りそばに抱き寄せた

ちらり、と様子を伺えば、君はもう声が声にならないみたいだ

私のことでいっぱいいっぱいなのかと思うと、どうしようもなく嬉しくなる



「……温かいなあ」



私も莫迦な予言をしたものだよ、考えればもっと近道があっただろうに

お願いだからAちゃん、なるべく早く包帯アレルギーを克服して

そして私の予言を叶えておくれ


＿＿＿＿＿私が待ちきれなくなる前に




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