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「あのー、手当てお願い出来ますか?」
太宰さんから私が離れたのは、そんな言葉の後、敦君が現れたからだった
「わ、敦君! どうしたの!」
「ちょっと、任務で」
正確には、腕に血を流す敦君の姿が見えたから
見るなり私は敦君に駆け寄って、怪我の様子を見ながら敦君の話を聞いて
それからすぐに、消毒液と__包帯を、手にした
「包帯、巻いておくね」
「有り難うございます」
真っ赤だった傷口を、真っ白な包帯で覆う
幸い敦君の怪我は大したことなく、敦君も解剖されずに済んで良かったと笑いを零して云った
その背中を、ホッとしながら見送った時
「…………本当、君って」
真後ろから微かに聞こえた、溜め息混じりの、太宰さんの小さな呟き
そこで私は思い至る__たった今、太宰さんの見てる前で、手当てに包帯を使ったことを
それも、何の躊躇いもなくそうした訳で、背後に感じる太宰さんの気配に一気に胸が高鳴った
「あ、の……えっと……」
覚束無い切り出しで、ある筈のない云い分を探す
そうこうしてるうちに次の太宰さんの声が
「やっぱり抱き締めるだけじゃ足りない」
はっきり聞こえた、かと思えば
後ろ手に取られた右手首に違和感、振り返って確認しようとした時にはもう、太宰さんは満足そうに頷くところで
「うん、これでよしっと」
「……、何して」
問いに答えるかのように、私の目の高さまで上げられた太宰さんの左手、には何故か
何もしてない、私の右手も一緒に付いてきた
「な、にこれ、包帯……?」
「そう、君と私の手を包帯で結んだよ」
太宰さんの云う通り、私の手首に巻かれた包帯は、太宰さんのと繋がって解けなくて
「君が私から逃げないように」
吃驚してその手を引き寄せれば、太宰さんの手も一緒に私のもとへ寄せられた
「こ、こんなことしなくても、逃げたりなんか」
「おや、吐くならもっとましな嘘にしようね」
と、今度は太宰さんが、自身の左手を自分の方へぐっと引くものだから
同じく私の右手も太宰さんのを追って
否、それだけにとどまらず、勢い良く引かれた右手に私の体までもが倒れるように付いて行って
「今日はずっと、私のそばに居てもらうから」
バランスを崩した私が飛び込んだのは、待ち構えていたかのような太宰さんの胸の中
ふわっと香った太宰さんの匂い
同時に、少しの包帯の匂いも鼻をかすめた
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桜月(プロフ) - 完結、おめでとうございます!!太宰さんの仕草や言動のひとつひとつにすごく胸がきゅっとなって、、めちゃめちゃキュンキュンしました!とても読んでいて楽しかったです!! (2021年10月11日 0時) (レス) @page28 id: cb743e60b6 (このIDを非表示/違反報告)
千桜里 - はじめまして!太宰さんの心情や行動にとてもドキドキしました!!本当に面白かったです! (2020年9月29日 12時) (レス) id: d647e09f50 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタ娘(プロフ) - はじめまして。ヲタ娘です。すごく胸がキュゥ……として、フワフワっとしました! とっても面白いです! (2019年3月4日 20時) (レス) id: 737d873cb6 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 完結おめでとうございます!リクエストよろしければその後の話が読みたいです。お願いします。 (2018年3月7日 6時) (レス) id: 54de0e772b (このIDを非表示/違反報告)
月ノ輪(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく可愛くて胸きゅんばっかしでした!他の作品も楽しみにしています♪ (2018年2月22日 13時) (レス) id: 3aab0973d9 (このIDを非表示/違反報告)
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