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新しい職を得るべく、面接のため、と或るビルに向かう矢先、ビルに程近い川辺にてのこと
まさかのまさか
入水を試みる男性に鉢合わせました
*
「何故助けたんだい、全く」
目を覚ました彼の第一声
彼は自ら川へと身を投げた、云わば私は邪魔をした訳で、だからこの一言も想像の範囲内だった
ただ、こうして云われてみるとやっぱり、少しぎょっとしてしまうし、良い気分にはならなくて
__それでも
「た、助かって良かったあ……」
彼の言葉なんて聞く耳を持たずに、零れ出たのは心からの本音
目の前で死のうとした彼が、また目を覚まし、声を聴けた事にホッとして
そしたら何だか表情も緩んで
そんな私の視界の片隅で、彼が目を見開いた気がした次の瞬間だった
「……ねえお嬢さん、入水に失敗した代わりに、私と心中でもしてくれないかい?」
____へ?
今度ばかりは予想外の台詞で、ふと我に返った
たった今阻止した所なのにもう次?
此方はお陰でせっかくの正装もびしょ濡れ、腕時計も壊れたし、何より面接には遅刻確定だって云うのに
それに___
「ど、どうして私が」
安堵で隠れていた苛立ちが顔を覗かせ、睨みを効かせて包帯だらけの彼を見やった
……ら
「君が、とても綺麗だから」
そう云って薄く笑う端正過ぎる顔立ちに、物の見事に呆気なく見惚れてしまって
甘い声、さり気なく取られた手
目を奪われる微笑み
完全にこの人の虜になっていた、だろう
ただしそれは、云われたのが、こんな意味不明な台詞じゃなければの話だけど
「ねえ、私と心中してくれるかい?」
「へ!?」
「……だめ?」
もう片方の手が、そっと私の頬に伸ばされる
心中って口説き文句だったっけ、ううん絶対違う、なんてぐるぐる空回る思考
そんな中、手のみならず、心做しか男の顔も私の方へと傾いてきて
水に濡れた体が、一気に熱を持ち始めて
「お、お断りしますっ!」
息を呑むイケメン、唐突な心中のお誘い、なんて強烈なダブルパンチ
心臓が悲鳴を上げる前にこの場からお暇しようと、大声を出して立ち上がった
「わ、私もう行きますから」
「待ち給え」
しかし、腕を掴まれて叶わず、おまけに距離を詰めてくる包帯の男
「どこへ行くんだい?」
「……武装探偵社、ですけど」
「奇遇だね、私、そこの社員なのだよ」
____へ?
本日何度目かの間抜けな声が、喉を通り抜けた
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桜月(プロフ) - 完結、おめでとうございます!!太宰さんの仕草や言動のひとつひとつにすごく胸がきゅっとなって、、めちゃめちゃキュンキュンしました!とても読んでいて楽しかったです!! (2021年10月11日 0時) (レス) @page28 id: cb743e60b6 (このIDを非表示/違反報告)
千桜里 - はじめまして!太宰さんの心情や行動にとてもドキドキしました!!本当に面白かったです! (2020年9月29日 12時) (レス) id: d647e09f50 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタ娘(プロフ) - はじめまして。ヲタ娘です。すごく胸がキュゥ……として、フワフワっとしました! とっても面白いです! (2019年3月4日 20時) (レス) id: 737d873cb6 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 完結おめでとうございます!リクエストよろしければその後の話が読みたいです。お願いします。 (2018年3月7日 6時) (レス) id: 54de0e772b (このIDを非表示/違反報告)
月ノ輪(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく可愛くて胸きゅんばっかしでした!他の作品も楽しみにしています♪ (2018年2月22日 13時) (レス) id: 3aab0973d9 (このIDを非表示/違反報告)
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