CM ページ29
目の前に映るきらびやかな室内。
豪華さの中にも気品漂うその場所では、不釣り合いな程の沢山の人の声が響いている。
それもそのはず、今は化粧品ブランドのCM撮影に向けた準備中だからだ。
あちこちから指示が飛び交っていて、雑然としているその一角で、私はじっと鏡と向き合っている。
「やっぱり、Aちゃんは肌が綺麗ね。
前も綺麗だったけど、結婚してからますます磨きがかかったわね」
そう溜息混じりに話すのはこのブランド専属のメイクのリサさん。
この企業は、何年も私を起用してくれていて、馴染みのスタッフも多い。
リサさんとも、もう、長い付き合いになる。
彼女は、初めて会った時から、私にもこうして気兼ねなく話してくれる裏表ない人で、とても話しやすく、メイクの腕も抜群で頼りになる。
「そんなこと無いですよ。
リサさんの腕がいいからです」
「それは、もちろんよ!
でも素材がいいから私のメイクがより生きるのよ!
Aちゃんの撮影の時はいつもより張り切っちゃうわ。
今日も期待していてちょうだい」
リサさんは、腕捲りしながら私を鏡越しに見てニヤリと笑う。
私はそれに苦笑いを返して、目を閉じた。
今回のコンセプトは心奪われる唇。
そのコンセプトの元、撮影では妖艶さや色気を感じさせる作りになっている。
今まではどちらかというと清楚さを売りにしていたブランドが、今回は180度イメージを変えてきた。
私が、こういうイメージの撮影の話を頂くことは滅多にない。だから、珍しいなっと思うと同時に、今までにない演じ方をさせて貰えることが楽しみだった。
だけど、その反面、果たして自分に色気や妖艶さが表現できるのかと不安もあった。
だけど、いま自分にできるの最大限の表現をするしかない。
「Aちゃん!出来たわ」
そう考えているとリサさんの声が聞こえて、閉じていた瞼をゆっくりと開ける。
目の前にはいつもより、濃いメイクで大人っぽくなった自分の姿。
流石リサさんだ。
今回のコンセプトに合わせて完璧に仕上げてくれた。
鏡越しに私の反応が気になっているのか何処か不安げなリサさんに微笑むとリサさんは、ほっとした様に笑う。
「この私が腕によりをかけて、素敵な女性にしたんだから、皆、Aちゃんから目が離せないわ」
さぁ、いってらっしゃい!リサさんは私の背中を軽く叩きながら、そう口にする。
力強いリサさんの言葉に勇気を貰った私は、お礼を言って撮影に向かった。
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優(プロフ) - とても読んでて楽しかったです!続きのパスワード教えて欲しいです! (2022年2月8日 12時) (レス) @page37 id: 95db141eb0 (このIDを非表示/違反報告)
美加莉(プロフ) - さくらさん» あ!そうなんですね!!いえいえ、全然大丈夫です!ご対応ありがとうございました😭 (2021年11月23日 21時) (レス) id: d0142f9e8a (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 美加莉さん» すみません!最初に小春という名前で始めた名残で一旦、小春という名前で書いて後で名前変換できるようにしています。ですが、所々出来ていなかったみたいです。サッと直しましたが多分まだ直せていない部分があると思うので、時間がある時に見直して直していきますね。 (2021年11月23日 21時) (レス) id: 7b4f4afa76 (このIDを非表示/違反報告)
美加莉(プロフ) - いつも楽しみに拝見しています!一つ質問なのですが名前の小春というのは主人公の名前なのでしょうか? (2021年11月23日 21時) (レス) @page17 id: d0142f9e8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2021年11月15日 19時