第13講 ページ13
「……ただいま。」
力なくアパートの一室のドアを開け、背中で閉める。
私は結局なんとか四年制大学に入学し、今は県郊外の大学付近のアパートで一人暮らしをしている。
ふと時計を確認すると、午前1時過ぎ。
近場で飲んでいたとはいえ、これからお風呂に入ったりしなきゃだと思うと…億劫すぎる。
こんな時、お母さんがいればな…。
感傷的になった心にふと家族が思い浮かんで涙が出そうになる。
ゆっくり靴を脱ぎ、冷たく狭い玄関先の廊下でそのままへたりと座り込んだ。
握りしめていたスマホを確認すれば、さっきより1件増えた着信履歴。
「……っ…いお…くん……」
耐えきれず、溢れ出す。
液晶に水滴が落ちる。
____ごめんね、一織くん。
弱くてごめん。
高校生の時から、私の悲しい気持ちをぶつけていいよって…私の弱い所を全部受け止めてくれた一織くんだから。
私も強くならなきゃって…信じる強さが欲しいって。
だから、信じてるって言った。まず、言葉にした。
私の今の不安な気持ちをぶつけるのと、部活の相談をするのでは訳が違う。
会えない時間が増えた分、想いは募った。だけど、募った分だけ、あなたを好きになった分だけ…不安も募った。
そしてその分……一織くんに迷惑をかけない、心配をかけない自分でいるように努めてきた。
____この恋を、絶対に終わらせたくないから。
だからこそ…今は電話には出られない。
私の汚い、弱い部分は、今見せられない。
だから…一織くん。
どうか私から離れないで……お願い。
・・・・・・・・
「小鳥遊事務所側の対応としては、そのような事実は一切ないということで処理していきます。…それでいいですか?一織さん。」
「むやみやたらに否定すると更なる反響に繋がりかねませんが…あちら側の事務所もそういった対応を取ると見受けられます。それが最適解でしょうね。」
時刻は午前0時半。
今日の仕事と対応がようやく終わり、一織と紡は取材に対する受け答えの相談をしていた。
それから30分ほど社長も交えて話し込み、終わったのは午前1時過ぎ。
スマホを確認するがもちろん折り返しはない。
その時、ふとすれ違いざまの会話が耳に入った。
「おい聞いたか?郊外の○○市でさ、20歳くらいの女が道で死んでたって。」
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アイリス(プロフ) - 毎話コメントはしていないのですが通知が来る飛んでいくんですよ😂時間があれば読み返したりして何度も楽しませてもらっています!こちらこそいつも素敵な物語をありがとうございます🙇 (2022年3月6日 22時) (レス) @page32 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - アイリスさん» アイリスさん!😳ご無沙汰しております😢そうですね、2人の心と天くんの心に注目して見守って頂ければと…😌今日の夜また更新予定なのでぜひまたよければ覗きに来てくださいね☺️いつも本当にありがとうございます!<(_ _*)> (2022年3月3日 11時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - こんにちは!これからどうなるんだろう…!とドキドキしました😳だけど2人の心が離れることはないと思うので、嫉妬かわいい〜と楽観的に読ませて頂きます😂 (2022年3月2日 22時) (レス) @page29 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» 更新するする詐欺になってしまっているのですが🥲2月半ば以降は繁忙期から解放されるのでガンガン更新していきます🙇♀️それまで宜しければお待ちください☺️コメが届いたので飛んできましたが、嬉しいお言葉有難うございました…!! (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» monaさんコメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉でしょう🥲一織の口調や行動はかなり気をつけているので、そう言って頂き安心致しました…!アイナナ愛、感じてください…!☺️最近全然覗けてなくて(続きます💦) (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なたね | 作成日時:2021年4月29日 0時