第2講 ページ2
｢…失礼。｣
この声が聞こえるともに、私の目の前に現れたのは、サングラスにスーツの高身長な男の人。
丁寧に、でも力強くムードメーカーくんを押しのけ、私の腕を掴んでどんどんガーデンの奥へ連れていく。
強い、でも痛くない、でも絶対にほどけない。
この強さで私に触れるのは。そしてあの声は。
彼しか、いない。
ポインセチアの道を抜け、クリスマスローズが咲き乱れる隠れ家のような小さな場所で歩みを止める。
｢…あの。｣
｢Aさん。｣
あぁ、この凛とした声で名前を呼ばれるだけで胸が甘く締め付けられるようだ。
他の人に名前を呼ばれた時とはまるで違う。
…でもどうして。
いや、どっちにしろさっきの様子を見られてしまった。これは、あんまりよくない。
｢一織くん。｣
彼はまだ私に背を向けたまま。でも、私の左腕を掴んだまま。
｢あのね…さっきのは全然そういうんじゃなくて。｣
｢わかってます。｣
食い気味に、少しだけムキになったような声。
愛しくて、このまま後ろから抱きしめたくなる。
｢…でも少しは警戒してくださいよ。｣
そう言って、一織くんはゆっくりとサングラスを外しながら私の方へ向き直った。
少し悩ましげなその仕草とひそめられた眉は明らかに大人のそれで、一織くんも成人したんだと改めて実感させられる。
ローズのアーチを背に、私に逃げ場は無く、一織くんはどんどん顔を近づけてくる。
｢ご、ごめんね…でも私にあんなこと言ってくる男の子なんていないって思ってたから…｣
すると一織くんは、はぁー…と長く重いため息をついた。顔がそもそも近いので、息が耳にかかって一気に体温が上がる。
というか、一織くんまた背が伸びたんじゃ…
｢…まったく、あなたは自分を低く見積もりすぎです。｣
そ、そんなことないのに…
すると、さらに一織くんは顔を近づけて、ささやくように言った。
｢それに、男の子ではなく、男です。彼も…私も。｣
唇と唇が触れそうになるくらい近くて、もう私の心臓は張り裂けそうにうるさい。
精一杯こくこくと頷くと、一織くんは少し離れた。
一織くんも、少し顔が赤い。
｢…ムキになって、すみません。……ドレス…｣
｢…ん？｣
｢ドレス…似合ってますよ。｣
和泉一織くん、20歳。
私の、彼氏…です。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 508人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アイリス(プロフ) - 毎話コメントはしていないのですが通知が来る飛んでいくんですよ😂時間があれば読み返したりして何度も楽しませてもらっています！こちらこそいつも素敵な物語をありがとうございます🙇 (2022年3月6日 22時) (
レス) @page32 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - アイリスさん» アイリスさん！😳ご無沙汰しております😢そうですね、2人の心と天くんの心に注目して見守って頂ければと…😌今日の夜また更新予定なのでぜひまたよければ覗きに来てくださいね☺️いつも本当にありがとうございます！<(_ _*)> (2022年3月3日 11時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - こんにちは！これからどうなるんだろう…！とドキドキしました😳だけど2人の心が離れることはないと思うので、嫉妬かわいい〜と楽観的に読ませて頂きます😂 (2022年3月2日 22時) (レス) @page29 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» 更新するする詐欺になってしまっているのですが🥲2月半ば以降は繁忙期から解放されるのでガンガン更新していきます🙇♀️それまで宜しければお待ちください☺️コメが届いたので飛んできましたが、嬉しいお言葉有難うございました…!! (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» monaさんコメントありがとうございます！なんて嬉しいお言葉でしょう🥲一織の口調や行動はかなり気をつけているので、そう言って頂き安心致しました…！アイナナ愛、感じてください…！☺️最近全然覗けてなくて(続きます💦) (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なたね | 作成日時：2021年4月29日 0時
