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午前の化学の授業も、午後の体育も、あまり身が入らなかった。私も酒井に行くと何度も訴えたけれど、授業があるならそちらに出なさいと言われてしまって普通に授業を受けている。
気が休まらないまま、適当に食堂でご飯。こういう時は甘いものに限る。丸一日中上の空だったからか、ゼミの先輩にも心配されてしまった。
ケーキを食べ終える頃に、深町くんから『先生が岩から落ちて頭に怪我をした』とメッセージが送られてきた。頭を思いっきりハンマーで殴られたみたいな、そんな感覚。
周りの喧騒も、雑音も、ぐわんぐわんして何言ってるか聞こえないくらいのショック。頭に怪我って、どれくらいの怪我?記憶障害とかになったらどうしよう、頭を巡るのは不吉なものばかりで、冷や汗が止まらない。
「健ちゃんさん、先生大丈夫ですか、私、先生の未来見てて、それで、」
「…柊、少し落ち着け。彰良は無事だ。少し頭打って怪我してるけどな」
「私また先生のこと止められなかった、」
「いいか、今回のこともお前のせいじゃない。だから気に病むな。…悪い、また電話する」
気づけば健ちゃんさんに電話をしていた。いつもいつも、私が一方的に要件を伝えたり取り乱したりしているときでも、一度ちゃんと受け止めて落ち着かせてくれる。
ぷつりと糸が切れたみたいに涙が止まらない。これが安堵の涙なのか、自己嫌悪の涙なのかはよくわからないけど、止まらないことだけはわかる。
泣き腫らした顔でゼミに戻ったら教授にも、ゼミの先輩にも、すれ違う学生にも心配された。大丈夫です、って笑いながら誤魔化したけど、きっとぎこちなさすぎる笑顔だったと思う。我ながら。
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ちくわ。(プロフ) - かふぇもかさん» コメントありがとうございます!不定期更新なのでお話をコンスタントにお届けすることが難しいのですが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年8月24日 20時) (レス) id: eb81f6bdc7 (このIDを非表示/違反報告)
かふぇもか(プロフ) - こんにちは^ - ^いつも楽しく読ませていただいてます!(?)このお話毎日読み返してニヤニヤしてます(( (2021年8月22日 18時) (レス) id: 586d3de0ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくわ。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pipipi__dream
作成日時:2021年8月9日 0時