繋ぐ~心に傷を負ったこどもたち~

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渡辺side






樹｢ お前仕事どうすんの？ ｣




うわ出た。俺の世界一聞きたくない言葉。





『 うっ、ちょっと体調が…… 』

樹｢ んなこと言ってねぇで早く仕事決めろよ ｣

『 ……鬼！おにぃ！ 』





皆さん御察しの通り…

俺は絶賛就活中なのだが、今まで受けた職場は全て不合格。

唯一受かったと思ったら、口コミが悪い意味でえぐいブラック企業だった。





俺の不甲斐ない人生は、
大学進学の時から始まっていたと思う。


元々これといって夢はなく、とにかく親元を離れて一人暮らしがしたくて何となくで東京に来た。


そして何となーくで大学を決めて、
社会福祉系学部の教育学科に所属。


そのため、一応保育士の資格を持っているが、将来保育士になる気は微塵もない。



なーんてことを言って就活を始めたもんだから、当たり前だが何の前進もなく、気づけばもう卒業手前まで来てしまった。






『 あーもー、高校生に戻れればなぁー 』





もっと真剣に将来のこと考えとけばよかった。

なんて、過去の自分のせいにして努力しない俺は、全く成長してないなぁとつくづく思う。





樹｢ そんなこと言って実際に戻れるわけじゃないんだから。現実見なよ ｣

『 ……わーってるよ 』





もちろん、｢子供を笑顔にできる保育士になる！｣と夢に向かって努力してきた樹は、

努力が実り見事、卒業後から大学近くの保育園に勤務することになったらしい。



そして、今こうやって、
ニートになりかけている俺を心配して家を訪れてくるのだ。






『 ……わかった！ 』

樹｢ あぁ今度はなに？｣

『 俺、板前になるわ！ 』






何言ってんだこいつ、って思いが物凄く伝わる表情でこっちを振り返る樹。





樹｢ はぁ…、んで？どうして板前になろうと？ ｣

『 ほら、俺お寿司好きだし、ネタの名前も全部言えるよ？えーとマグロでしょ…サーモンでしょ… 』

樹｢ そんな簡単になれるもんじゃねぇよ、 ｣





……分かってるよ。でも、自分でもどうすりゃいいかわかんないんだよ。




はぁー。俺の人生なんなんだろ。
このまま親にすがって生きて、何もせずに死んでいくのかなぁ……







この時の俺は知らなかった。
俺の人生に、転機が訪れる日が来るなんて＿＿＿

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