30錠目:『移りにけりな いたづらに』 ページ29
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｢10年間変わらずに接してくれた貴方を勝手に拠り所にしてた｣
そのまま俺の太腿に腰を下ろしたAは崩れた前髪を整えるように手で払った。
｢彼も、彼の両親も、私の両親ですら必要以上に優しいの、“返答は急がない”って｣
｢あー...おう、聞いた｣
｢つまりそれってYESを待ってるってことでしょう? 私は...今まで一緒に居た成龍を急に...、全く新しい...友達以上の存在として受け入れる準備は出来ていなかった｣
この件に悪人が居ないことは明白であり、ただ運命の噛み合い方が否が応でも合致しなかった。
幼い恋愛感情を抱き続けている俺を除いて。
俺から退いたAは抜けるほど綺麗に拭き上げられた大きな窓に手を付き、夜空を見つめた。
｢私はね...多分死ぬまでずっと、星章の皆が好き｣
｢...そう、か｣
｢皆も変わらないと思ってた。...でも違った｣
僅かな振動に、ハーバリウムの中身が揺れる。
｢皆ちゃんと考えてて、将来のことも見据えて...、言ったでしょ? 大人になれなかったのは私だけだって｣
｢A......｣
ただ名前を呼ぶことしか出来ない自分に嫌気が差した。
確かにAの声は震えていたが、こんな情けなさを引き摺りながら生きてる俺に彼女を抱きしめてあげられる資格など無かった。
｢だから...私の大好きな思い出たちが壊れない為に、佐曽塚を失ってはいけないことは絶対条件だった｣
｢ッ...んな辛そうな顔見せないでくれ｣
｢私だけが過去に囚われて、子供のまま｣
ふわりと振り返り、窓に背を向け俺を視界に捕らえる。
｢折緒は随分と自身を過小評価してるみたいだけど...それは間違いね｣
｢いや、マジで...その、違うっつーか...!!｣
結論付ける様に、無理に笑いかけてくる彼女に耐えられなかった。
｢AがAの生き方を...在り方を否定したら、俺の......俺がお前に片想いし続けた10年間はどうなるんだよ!!｣
まだ残っているアルコールに毒された身体を無理矢理動かし立ち上がり、再びAの腕を掴んだ。
この歳になって初めて壁...窓ドンをするとは思ってもみなかったが、実行してしまったものは仕方が無かった。
｢か、片想...い? 折緒が私に?なんで....｣
｢...ッそうだよ!! なんでって...恋に理由なんて無いだろ｣
Aは大きな瞳を更に見開いた。
俺史上最も彼女との距離が近いが、愈々この感覚にも慣れてしまった。
｢...俺はな、Aのことが好きだよ｣
あぁ、もうどうにでもなってしまえ。
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31錠目:『折緒冬輝という男』→←29錠目:『続・知らなくてはならないこと』
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星猫 - もう一つのｐｃがしました。初めまして！とっても素敵です！高評価しました！ (2021年9月8日 11時) (
レス) id: 7d3fe1e696 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - ゆりりんさん» わ〜!! 勢いある挨拶ありがとうございます〜^^ ちまちま更新していきますので気長にお待ち頂けると幸いです (2021年2月2日 1時) (レス) id: f96d68692e (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - まず最初に…好き!!（挨拶）続きが読みたくてたまらないです！ (2021年2月1日 20時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 棘水さん» 了解です！また何かあったら声掛けますんで、これからも更新頑張って下さい！！ (2019年4月9日 15時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
棘水(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます!! が、合作イベント....!!大変魅力的で参加したい気持ちは山々なのですが私生活の多忙や内容が合作内容が全く分からず他の皆様にご迷惑をかける可能性しかないので今回は辞退させて頂きたく思います....また機会がありましたら是非....!! (2019年4月8日 22時) (レス) id: c7cb6e701d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：棘水 | 作成日時：2018年7月20日 13時
