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新学期が始まることもあり、もう小慣れた浜松行きの電車に乗ることも、
しばらくは会えなくなる家族にも寂しさを感じながら駅のホームに立っていた
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いつもなら2日前には帰って次の日に備える私からすれば、こんなことありえもしない
焦る気持ちで時間を確認しながらも午後のオリエンテーションに間に合うかどうかの瀬戸際にいる
進級して一発目の授業だ
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こんなにギリギリまで地元にいたかったのは何なのか、
先輩がいるはずもないのに思い出だけが鼻を掠めるこの感じが不思議と嫌ではなかった
真昼の人気のない車内
少しだけ開いたブラインドの隙間から外が見えた
東京も晴れだろうか
先輩は何の会社で働いてるんだろう
あ、昼休憩の時間かも
高校の時はあんなにも遠かった人が
今は簡単にこの連絡先から繋がっている
あれから気にしていたラインは順調に続いてるし、まるで何もなかったみたいな内容
先輩にとっては…何もなかったのかな
インスタであげてた彼女さんの横顔
きっと家のソファに二人でくっついて映画かなんかでも観てるんだろう
妄想とは怖いもので
そのままラブシーンなんか出てきて、なんとなくそういう雰囲気になって、すんなりとキスから始まるんだろう
私と重ねた唇で
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自分の思考回路に思わず目を伏せた
こんなこと考えてるなんて知られたら誰でも引くさ
ちょっと知り合い並のカップルの事情でここまで想像するなんて気持ち悪いのなにものでもない
その彼女は不意に撮られたのに凄く綺麗な顔立ちをしていて、勝ち目がないというかそもそも戦う権利さえも持たせてくれないような
それなのにどうして岩田先輩は他の人とキスをしたりするの?
彼女がいることは知ってた
彼女になれないこともわかってる
だけどこんなの、期待を持ったところで望みがないなんてあんまりじゃないか
真相も聞けないまま、弱い私を知っていくばかり
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作者名:彗星 | 作成日時:2020年5月22日 23時