でっかい愛

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神ちゃんの後ろ姿が自動ドアをくぐってくのを見送ってから、
エンジンかける。


俺、めちゃくちゃ好きやん。


こんなに誰かに惹かれるん、初めてや。


誰とも番にならずに来て良かったって。

心の底から思う。


きっと神ちゃんに出会うためやってんや。


どうしたら、俺に振り向いてくれんねやろ？


空までそびえてそうな防波堤で囲まれた神ちゃんの心に、
どうやったら、踏み込める？


恋愛音痴の俺に分かるわけもないな・・・














社内コンペの朝早く、
神ちゃんから電話が入った。


「神ちゃん？おはよ。
どうした？」


「ごめん、重岡。
頼みたいことあって・・・」


途切れ途切れの神ちゃんの声。


「今すぐ行くから！」


気付いたら、そう口走ってた。


チャリで30分爆走。

神ちゃんの部屋は７階の角部屋。


インターフォン押したら、
内側から扉が開いて、

真っ赤な顔した神ちゃんが、
ふらあっと、もたれかかってきた。


「神ちゃん！昨日より酷いやん！」


「薬が効かへんねん。
こんなん初めてで・・・はあ、はあ、」


息が切れてて、瞳はとろんとしてる。


あかん、俺がやられてまう・・・


部屋中に充満する、甘い香り。


「ごめん、今日のコンペ。
資料、俺の代わりに、プレゼンして、欲しい、」


「分かった。
どこある？
パソコンの中？」


「データ、まとめてあるから、
あと、昨夜、プリントアウトしたのも、」


「休みって言うたのに・・・」


「この仕事だけは取りたいねん」


「うん。
俺も神ちゃんと仕事したいで」


「頼んでい？」


「当たり前やろ。
それより、病院行かなあかんよな？」


「・・・うん、行く、つもりやけど。
今は、無理・・・」


「大丈夫かな。
ミーティング終わったら迎えに来るから。
一緒に行こな？」


「ごめ、ん・・・
ヒートの時は会いたくないなんて、言ったくせ、
頼って、」


「泣かんでええから、な？」


立ってるのも、しんどいやろうに。


「泣いてなんかないって。
生理的な涙やから気にせんとって」


そんな強がり言う。


崩れそうな神ちゃんを抱き上げて、
リビングのソファに寝かせる。


寝室へ続く扉。

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