8 ページ10
✾
どのように変化させたのか、は未だ不明であるが、月の人は人類が宝石化し始めた後に現われた。
そして、宝石になった彼らを砕いて連れ去ったのである。
飛来するタイミングや、彼らが決まって鉱石と化した人だけを狙って襲来してくることから、皇位を継いだばかりのグルッペンやその側近たちは、宝石化の原因が月の人にあると推測した。
以来、グルッペンたち人類と、月の人との戦争が続いているのである。
月の住人は奇妙だった。
一度攻撃が当たってしまえば、霧となって消えてしまうのだ。
石になった人類よりも脆い身体をした、その奇妙な敵は、いつも宣戦布告なく帝国に現われる。
およそ百年。
これまでに月に捕まってしまった人間の数は少なくなかった。
人類が、月人の戦争のために軍事態勢を見直し、戦い方も身体の使い方も一から築いていけたのは、グルッペン率いる側近たちの功績があってこそである。
宝石は脆い。
硬度も、靱性も、全てが本物の宝石の特徴と同じになってしまった彼らが、ようやく不自由ない生活を送れるようになったのは最近のことだ。
少しでも露出した肌同士が触れれば、低硬度の身体は傷ついてしまう。
木の棒でも当たれば、その部分にはヒビが入る。
このような不便な生活では、手袋といった服装は重要であった。
加えて、振動は感じても寒さや暑さ、痛みといった感覚はない。
空腹もなければ喉の渇きもない。
そして最も重要なことは、彼らが不死であることだ。
身体全てが石になってしまった彼らは、心臓の鼓動の時間が止まってしまったのか、歳もとらなければ死ぬこともなかった。
砕けてしまった身体は、なぜか復元すれば再び動かせるし、意識も戻るのである。
これは最大の謎だった。
月の人の仕業なのか。それとも生命力の神秘なのか。
今も原因不明の謎の一つだった。
人間は感覚と行動の自由、そして死すらも月に奪われた。
その憎しみを、グルッペンはいつまでも忘れない。
彼は、元の姿に、すなわち人間に戻るために、戦うことを選んだのである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鯉口(プロフ) - あきらさん» コメントありがとうございます！最初の注意事項の項目を読んで察していただけると幸いです (2022年7月20日 0時) (
レス) @page1 id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
あきら - 宝石の国、、、、？あっいつも見てます頑張ってください (2022年7月19日 18時) (レス) id: 59a8197af5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
