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「…先生が探してたから、行くよ」
陽菜ちゃんに手を引かれて、その場を離れる。
私の方を少しも見ないで黙々と歩く後ろ姿に、何か言わなきゃ、と焦りだけが募っていく。
『……陽菜ちゃん、あの、』
「…最近、あんまり頼ってくれなくなったね」
『…』
「もう私といるの、嫌になった？」
『っそんなわけないよ、！』
「…でも、何か隠してるでしょ？」
『か、くしてないよ…』
「、Aは嘘つくの下手だから、分かるよ」
振り向いた陽菜ちゃんの顔を見たら、結局何も言えなくなってしまった。笑っているけど、どこか悲しそうな顔。私のはっきりしない態度のせいで、陽菜ちゃんにこんな顔をさせてしまったんだ。
廊下の途中で手を繋いだまま向かい合う私たちは、徐々に周りの視線を集め始めて。でも今、陽菜ちゃんから目を離したら、駄目な気がして。
『…、ひなちゃ、ん』
「…ごめん、今日だけ、別行動しよっか」
陽菜ちゃんはふい、と視線を私から横にずらすと、手を離して教室へ入っていってしまった。私は、その場からなかなか歩き出せなくて。
私って、肝心な時、本当に何も言えないんだな。そう実感させられて、情けなくて、目頭が熱くなる。
それでも、やっぱりここで私が泣くのは違うから。
「…慎太郎、今日部活無いよね？
私、別の子と帰るから、Aと２人で帰ってて」
「え、いいけど、なんで？」
「別に、ちょっと用事」
教室に入った時、聞こえてきた２人の話し声。
慎ちゃんが私の方を見たような気がしたけど、私は聞こえない振りをするので精いっぱいで。なんでもないように自席に座って、本を開く。
内容は、少しも頭に入ってこなかった。
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年7月23日 20時
