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「Aちゃん、おはよう!」
『…あ、おはよう、凛花ちゃん』
「ねえ、お願いがあるの」
学校に着くやいなや、凛花ちゃんに手を引かれて、教室の外へと連れ出される。
「…田中くんの連絡先、教えてくれない?」
恋愛はよく分からないけど、恋愛小説は縁があれば読むこともある。私が感情移入してしまうのは大抵、ヒロインではなく周りの所謂モブキャラたちだった。そっちの方が、断然自分の状況と近いから。
『私はいいけど、…勝手には出来ないから、』
「大丈夫、私が無理言ったって言うから」
『…でも、聞いてからの方が、』
「意地悪しないでよ、知ってるんでしょ?」
『意地悪って、…そんなつもりじゃ』
だから、こういう状況を私が、しかも現実に経験するだなんて、思ってもなかったな、とここ最近頻繁に思う感想がまた浮かんできた。
「…Aちゃんも、田中くんのこと、好きとか?」
『そんなんじゃないよ、個人情報だから…』
ちょっとだけ、面倒くさいな、と思ってしまった。
…嫌だな、私、自分でも気がつかないうちに、どんどん性格が悪くなってきてる気がする。
「…A?」
『あ、陽菜ちゃん…』
そこに通りかかった陽菜ちゃん。私が困っているかも、と心配して見に来てくれたのかもしれない。すぐに気づいてくれて、声を掛けてくれた。
「えっと、…城田さん、何してるの?」
「…ただ話してただけ、ね、Aちゃん」
陽菜ちゃんと凛花ちゃんの視線が私に向く。
凛花ちゃんと2人の秘密の話だから、誰にも言ったらいけないのは分かっているけど、もう全部、何もかも話してしまいたかった。
『……そう、話してた、だけ』
でも、私は結局、何も言えなくて。
それどころか、陽菜ちゃんがどんな顔をしているのか、見たくなくて、つい顔を背けてしまった。
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作者名:春野菜 | 作成日時:2020年7月23日 20時