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〜〜〜
『…え、樹くん、どうしたの？』
「これ、渡しそびれててさ」
樹くんは扉を開けて私を見つけると、真っ直ぐ迷いなく近寄ってきて、何かのパッケージを差し出した。見るとそれは、あのピアッサーだった。
「…開けちゃったし、せっかくだからあげる」
『あ、りがとう…』
北斗くんが困惑しているのが手に取るようにわかったけれど、どうしようもないから、ひとまず笑顔で受け取った。何か言おうにも樹くんがいなくなってからではないと不可能だったから。
「じゃ、そんだけ、…また遊ぼうね？」
『うん、また、…』
「当番頑張って、北斗もね」
「え、ああ、…ありがとう」
用件は本当にそれだけだったらしく、樹くんはひらひら手を振りながらあっという間に帰っていった。
扉が閉まった途端、隣からの視線が刺さって痛い。どこからどう話せばいいのかわからないけれど、とにかく何かしら説明するまで解放してもらえなさそうな雰囲気だった。どうしたものかと考えを巡らせていると、それまで北斗くんが口を開く。
「ピアス、開けたかったの？」
『…そう、なのかな、そういう流れになって』
「その耳の…それ、樹がつけたの？」
『うん、そう、昨日、樹くんのお家で…』
そう言うと途端に北斗くんから、信じられない、とでも言いたげな、驚いた顔を向けられて。
これはやっぱり言ったらいけなかったんだ、と他人事のように思って、それから、さっき陽菜ちゃんに言わないでおいて正解だったな、とこっそり安堵した。
「…え、樹の家って、樹と２人きり？」
『……うん、？』
「男の家にそんな簡単に着いてっちゃ駄目だよ…」
『や、うん、…私も軽率だったなって思ってる』
「…大丈夫？何にもされなかった？」
心配そうな、複雑そうな顔の北斗くん。
されるわけないよ、と言ってから、あれは何もされてないに入るのかな、と額の感触を思い出してしまって。顔が赤くなっていないか、気が気でなかった。
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年7月23日 20時
