検索窓
今日:91 hit、昨日:11 hit、合計:415,355 hit

25 ページ25

〜〜〜




「…大丈夫?」

『……だ、いじょうぶ』

「お手々がかわいーことになってるけど?」




耳に感覚全部を持っていかれていた私は、無意識ながら何かに縋り付きたかったらしくて。あろうことか樹くんの服をしっかりと握り締めてしまっていた。




『…あの、ごめんね、…やっぱり怖くて』

「やめる?悪い子チャレンジ」

『……大丈夫、やめない』




手を自分の服に移動して、樹くんの方を向き直って、さあ改めてというところで、視界が徐々にぼやけだした。今日はどうにも涙腺がおかしいらしい。我慢しようとしたのに、どうにもならずに零れてしまった涙を、咄嗟に下を向いて拭う。




「……Aちゃん」




すると樹くんがピアッサーを持つ手を降ろしてしまうから、慌てて顔を上げる。と、樹くんの唇が、スローモーションみたいに近づいてきて。…額に触れた。

何が起こったのか理解出来なくて、言葉も発せないまま、途方もなく長い時間を過ごした気分になった。




「…今日は帰ろっか」

『……え、?』

「暗くなってきたし、家まで送るよ」




ようやく沈黙を破ったのは樹くんだった。

ぱっといつもの笑顔に戻ると、何事もなかったかのように立ち上がる。置いてきぼりにされてしまった私は、やっぱり黙ったまま何も言えなくて。




「…ほら、悪い子チャレンジはおしまい」




そんな私にしびれを切らしたらしい樹くんは、お手をどうぞお姫様、とわざとらしく茶化してみせる。




「…大丈夫、こんな簡単に男の家に上がり込んで
ちゅーなんてされちゃって、…十分悪い子だよ」




涙はとうに引っ込んだから、視界は良好。でもそれでいくら顔を眺めていても、樹くんの真意は分からなくて。それ以上何を言うことも、差し出された手を取ることも、出来なかった。

行き場をなくしてしまったらしい樹くんの手は、そのままなんとなく、私の頭をそうっと撫でた。




〜〜〜

26→←24



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (398 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1133人がお気に入り
設定タグ:SixTONES , 田中樹 , 松村北斗
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:春野菜 | 作成日時:2020年7月23日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。