cafe au lait (ページ20)

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樹くんは私が何か考え込んでいるのを知ってか知らずか、いつもの調子でたくさん話しかけてくれて。

悩んでいる時のそれは普通なら嫌だと思うはずだけど、樹くんの雰囲気と話の上手さのおかげか、却って少し気分が軽くなったような気がした。

「昨日ももっと話したかったから誘ったんだけど、
結局あんまり話せなかったじゃん、だからさ」

『…うん、じゃあ、いいよ？』

「え、いいの？」

『うん…？』

「なに、なにその曖昧なお返事は！」

『じゃあ、うん、遊びに行こう』

「…ほんとのほんとにやだったら、
陽菜とか慎太郎とか、誰か呼んでもいいけど」

『…じゃあ４人で』

「うそ、２人がいいって言って欲しかっただけ！
…え、もしかしてほんとにいや？２人呼ぶ？」

『…ふふ、大丈夫、樹くんと２人で』

陽菜ちゃんも慎ちゃんもいないところで誰かと遊ぶなんて、もう何年ぶりになるんだろう。

本当は４人の方がよかったけど、何か変わるきっかけになるかもしれないから、なんて。樹くんに対して初めは苦手意識しかなかったのに、もう２人で出かけようなんて、我ながら早すぎる展開だな、と思う。

「今日の帰り、そのままいける？」

『あぁ、……うん、大丈夫』

今日は本当はピアノのレッスンの日だった。でも、人生で１回くらいならずる休みしたっていいよね、なんて。頭ではそんな風に考えていられた。

それなのにいざ先生に連絡をするとなると、心臓がばくばく鳴って、飛び出してくるんじゃないかっていうくらい緊張して。良い言い訳が思い浮かばなくて体調不良ということにしたけれど、どこからどう見ても健康体の私。嘘をついてしまったんだ、と思うと、罪悪感でたまらなくなった。

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