【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

91.『懐宝惑人』 ページ46

朝のニュース。現在起きている連続狙撃事件の容疑者であったハンターが、死亡したという報道が流れていた。どうやら、これまでと同じように、狙撃だという。

これにて、捜査は撹乱される。ハンターが仕掛けた置土産に苦しまされ、捜査は停滞する。とんだ最悪なことをしてくれたものだ。

出版社へと顔を出してきた帰り。晴れているというのに、傘を差している集団へと出会した。脳裏に過るは、ネットのガセ。ああ、確か──と、朧気な記憶を辿る。

発砲音のような音。それにより、緊張感の高まった人々は火がついたようにパニックになった。傘を投げ捨て、道路へと走り出す。私は彼らを掻き分けるように歩く。走ると逆に危ない。

視界に、コンビニでたむろする少年達を見つけた。手には、球体。叩きつけて──発砲音がもう一度。

「っ、あのガキ！」

ヒールで急ぐ足は痛い。けれど。もう、限界だった。

「なにを、している！」



陽も登らぬ早朝、東都ベルツリーラインの浅草駅からほど近い、廃ビルの一室。男は机に向かっていた。

奥に長いワンルームの窓からは、隅田川に沿って走る首都高が見える。窓際に置かれた机には、ノートを広げられていた。男は、そのノートに深刻な表情で何かを書き綴ると、傍に置かれた写真立てに視線をやった。中に入っている写真を見て、表情を緩めると、彼はおもむろに立ち上がり、台に置かれたMK-11を手にした。窓に向けてライフルの調整をする男の背にレーザーライトの赤点が点いた。その点は、徐々に男の背中を上り、首筋、そして後頭部に到達した───が、ふいに右へと大きくずれた。

その刹那、窓ガラスが粉々に割れる。その軌道上を掠めていた男の頬に、銃弾によって擦れて切れた線が広がる。その銃弾は、ドアへと突き刺さった。男は、すぐにライフルを持ち構え、引き金を引く。ライフルの銃口は火を拭き、空薬莢が床へと落ちた。

男は、スコープを覗く。その先の何かを見て、口元を緩めた。何かを安心しきった表情であった。──再び、レーザーライトが灯る。次に点った赤点は、眉間にて止まった。骨を貫通するような鈍い音が聞こえ、男の身体が後ろへと仰け反った。眉間から血を流した男はそのまま重力に逆らわずに倒れ込み、台にもたれかかるように項垂れる形になった。手から離れたライフルが落ち、その経過で銃床が写真立てへと当たりひずみで、床へと落ちた。

音を立てて割れた写真立てに嵌っていたのは、彼の、ハンターの幸せな時間だった。

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