【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

89.『いぬ人を想う』 ページ44

「夏バテかもしれませんね」

安室の言葉に、愛梨はですよねと頷く。彼女は先日不在であった安室に海月の様子がおかしかったことを話していた。心配で仕方なかったし、あのあと殆どこころここに非ずの状態であったからだ。

安室は夏バテだと愛梨に安心させるように言いながら、内心はその案を違うだろうとは考えていた。意外と体調管理は杜撰な海月ではあるが、話を聞く限り夏バテとは縁遠い。

精神的な問題だろう。恐らく、第三者からの心的外傷。そして、それは、──愛梨に関係している。

憶測であるのと、彼女にそれを知られるのは海月の望まぬことであるのは、容易に理解できた。安室からみていても、彼女は愛梨に対して強い庇護の情を抱いている。

「よっし！今日先生が来たら何か冷たいものでもおごります！私の財布！」

そう意気込む愛梨に、愛梨ちゃぁん！と怖い表情で見つめる顔があった。梓である。奥で事務作業をしていた彼女はどうやら聞こえていたらしい。

「あなたバイトでしょ！お金大事にしなさい！」

先輩でもある彼女の苦言に悄気げる愛梨。安室はその二人をまあまぁと宥めようと声をかける──だが、梓はでもと続ける。

「海月先生はお得意様です。お店側からサービスとして提供します。マスターがいいって」

梓の言葉に、愛梨は先ほどと打って変わって表情を変化させた。燥ぐ愛梨に、来たらですよと別の宥め方をしながら、この暖かい空間に、心地よさを覚えていた。


その日、海月はポアロに顔を出すことはなかった。





「森山仁は依然、消息不明か……」

警視庁の会議室では事情聴取から戻ってきた白鳥達が目暮とジェイムズに報告していた。目暮はホワイトボードに貼られた、被害者候補の内の一人である森山の写真を見て小さく溜息を吐く。

「次の狙撃があるなら、ハンターが接触する可能性が高そうですね」

刑事である佐藤も加わり発言した。その言葉にジョディとキャメルも頷いた。一同の視線が、目暮へと注がれる。皆、次の指示を待っている。──ジェイムズと顔を見合わせて、互いに小さく頷いた。

「よし、ケビン・ヨシノとスコット・グリーン！この二人を徹底マークだ！」

その指示に、一同は了承の声をあげた。日本警察とFBIの威信をかけた、共同戦線である。


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5.24
誤字発見して変更しました。

ポロリってなんだよ……

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