86.『かつておわれた者たち』 ページ41
「ここでこんなことしてていいのか、沖矢」
私は目の前で優雅に珈琲を飲む男に眉を跳ね上げながら、ため息をつくしかなかった。
「何がですか?」
本当に絵になるのが憎らしいとでもいうべきか。ここは、米花町内ではないが、都内の喫茶店だ。何故、沖矢と茶を共にしているのかといえば、相手が呼び出してきたからだ。
「あー……もういい。で、私を呼び出したのは何だ」
沖矢ともあろう人間がただ私を茶に誘うなんてことは今まで無かった。
「愛梨さんのことです」
共に頼んだケーキへ突き刺そうとしたフォークがぴたりと止まった。
「……おや、よほど肩入れしてるんですね」
意外だと、やや面白そうな表情を見せた。私はフォークを沖矢の方へと向ける。やや視線をキツくした自信があった。
「愛梨がどうした」
警鐘しているとは気づいていた。
「貴方や、エルと
フォークが音を立てる。ケーキに思いっきり突き刺さった三叉が皿に突き当たって音を立てる。
「……登録されていたのか」
無惨に潰されたケーキを放置して、私は彼に聞き返した。
「はい。気になったので、確認しました」
ぱさりと、書類が置かれる。私は手に取ると、パラパラと捲る。私も似た書類のページの印刷もある。そして、その欄に辿り着き、書いている名称に、思わず口元を抑えた。
「信じられないといった顔ですね」
沖矢の声で、現実に戻される。そのまま、書類を沖矢に返した。いらないのかと尋ねられたので、私は首を横に振った。
「私にはもう、必要のないものだから」
カップに伸ばした手が、少し震えていた。それを見ないふりして、私は珈琲を煽る。
「それで、ここからが本題です」
沖矢の眼鏡の瞳の奥、つまり、赤井の緑の瞳が私を捉えた。
私の片足は、既に引き返せないところにいる。見事に、片足を引きずり込まれていた。
「犯人はこの男だと思われます。」
警視庁の会議室に置かれたホワイトボード。そのボードへと貼られた一枚の写真をFBIのジェイムズ・ブラックは示した。その写真には、髪を短く刈り上げた精悍な男だが写っていた。
「ティモシー・ハンター、三十七歳……。」
写真の下に記載された名前を目暮は読み上げる。かつて英雄と言われ持て囃され、そして、その座を引きずり降ろされ地に落ちた元海軍特殊部隊ネイビー・シールズの兵士の名前だった。
87.『ビターチック・メランコリー』→←85.『異次元の謎の幕が上がる』
738人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒井蜜柑(プロフ) - 花枝さん» ありがとうございます!本当に、長らくお待たせしてすいません!週一掲載で続けていけたらいいなと思っていますので、なるべく終了まで更新停滞がないようにがんばります! (2021年5月24日 14時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
花枝 - お待ちしておりました!おかえりなさい、これからも応援しています! (2021年5月23日 23時) (レス) id: 43f2320b1e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - きゃろさん» すいません、長らくおまたせしました!本当に更新停滞気味が多くてすいません。なるべく早くは続きを挙げたいと思いますのでもう暫くお待ちください。 (2021年4月29日 7時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
きゃろ(プロフ) - おかえりなさいです!続きが更新されてるのが嬉しくて感想を書いてしまいました!続き楽しみにしています。 (2021年4月29日 2時) (レス) id: d6911c13cc (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 藤崎さん» 全然大丈夫です!期待に添えれるように、頑張っていきます。本当ゆっくりし過ぎですいません。 (2019年3月22日 23時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2019年2月14日 16時