番外.『バレンタインの日のポアロ』 ページ5
毎年、限定でポアロは、特別メニューがある。甘いものは苦手だが、そんな私の為に、マスターが特別に甘さを抑えて作ってくれるガトーショコラは、一年の楽しみの一つだ。
そうだったのだが。
「安室さん効果」
いつもの席で珈琲を飲んでいると、愛梨がボヤいた。私もそれは思う。
視線をやった先には、またチョコを貰っている安室。それはひっきりなしにくる女子が渡しているもので、ただの仕事の邪魔だ。
中には、本気で告白してくる輩もいて、私としては、他所でやってほしいものだった。
「あ、先生。バレンタインなんですが、今年もチロルでいいんですか?」
私は愛梨に持ってきたたけのこの里を渡す。悪いが、私は菓子作りを得意としていない。
「チロルの限定版な」
いちご系が気になる。高価な物よりも、チロルの方が好きな私はかなり庶民舌だ。
当分、私のガトーショコラは出てこなさそうだ。女子が騒いでいる様子を一瞥し、パソコンへと視線を落とす。
――此処は、アイドルの握手会じゃないんだが。
彼女達に、小さく溜息をついた。仮にこの中の誰かが、彼と付き合えたとして、彼についていけるわけがないだろうに。
「お待たせしました。ガトーショコラです」
テーブルにそれが置かれた。綺麗な笑顔が、此方を見下ろしていた。
「大変だな、人気者は」
眉がたれた。愛梨が邪魔な女子郡を営業妨害という言葉で追い出し終えた。一気に静かになる。あぁ、やっと落ち着ける。
「毎年、楽しみにしてると聞きました」
ガトーショコラにフォークを食べる私を見て、眼を丸くしながら、口元には笑みを湛えている。
「特別だからな。安室」
私はそれを彼の前に突き出した。
「ハッピーバレンタイン」
何も変哲もないポッキーだ。まあ、チョコ二層の分だけど。
「生憎、お菓子作りは苦手だからな。これで勘弁してくれ。あと、お返しはいらない」
安室は私からのポッキーを受け取ると、礼を言って、期待してくれと言ってきた。
だから、お返しいらない。
「ハッピーバレンタイン」
そう言って、突き出されたのはポッキーだった。沢山貰ったバレンタインチョコという名の贈り物。その中には、手作りや、高価なものもあった。然し。
――反則だろ
それでも、三百円代のこのプレゼントが一番だと、受け取ってそう思った。
「ホワイトデー、期待しててくださいね」
困ったように顔を背けた貴方に、僕は笑顔を向けた。
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世間に乗ってみた。
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黒井蜜柑(プロフ) - 花枝さん» ありがとうございます!本当に、長らくお待たせしてすいません!週一掲載で続けていけたらいいなと思っていますので、なるべく終了まで更新停滞がないようにがんばります! (2021年5月24日 14時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
花枝 - お待ちしておりました!おかえりなさい、これからも応援しています! (2021年5月23日 23時) (レス) id: 43f2320b1e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - きゃろさん» すいません、長らくおまたせしました!本当に更新停滞気味が多くてすいません。なるべく早くは続きを挙げたいと思いますのでもう暫くお待ちください。 (2021年4月29日 7時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
きゃろ(プロフ) - おかえりなさいです!続きが更新されてるのが嬉しくて感想を書いてしまいました!続き楽しみにしています。 (2021年4月29日 2時) (レス) id: d6911c13cc (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 藤崎さん» 全然大丈夫です!期待に添えれるように、頑張っていきます。本当ゆっくりし過ぎですいません。 (2019年3月22日 23時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2019年2月14日 16時