【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

79.『転生作家の苦手なもの』 ページ34

「先生、『赤いクレヨン』って知ってます？普通のじゃないですよ」

「……作り話の都市伝説か？」

「さらっと現実的な回答ですね。でも知ってるんですね！実はですね、イベントで今、その赤いクレヨンをモチーフにしたお化け屋敷をやってるんです！面白そうなので一緒に行きましょうよ！」

そう言って愛梨は、一枚のチラシを私に見せつけてきた。チラシには、黒の紙に、少年が後ろ姿で映っていて、その背景には"出して"という文字が赤黒い文字と赤色でびっしりとおどろおどろしく書かれている。

「ね、行きましょうよ！」

喜々として私を誘ってくる愛梨。いや、物凄く断りたい。

赤いクレヨンとは、とある番組でタレントが話題にした創作怪談だ。あまりにも話題になってしまったが、誰も創作者を知らず、当のタレント自身も、スタッフにこんな話があると聞かされただけで、創作者をしらないのだ。

内容はこんなものだ。

――ある夫婦が中古の物件を購入した。

価格も安く、環境もよい。中古という点を除けば申し分のない、好物件だった。

ところがある日のこと、夫の方が廊下を歩いていると、一本の赤いクレヨンが落ちていた。

――夫婦には子供がいなかった。

だから、クレヨンなど置いているはずもない。

夫は「変だな」とは思ったが、中古であった故、前の住人の忘れ物だと考えてクレヨンをゴミ箱へと捨てた。

数日後の朝、彼が新聞を取りに行こうと廊下を出ると同じ場所に赤いクレヨンが落ちていた。

流石に不思議に感じた夫はそれを妻に話した。

――彼女は顔を青褪めた。

「実は私も昨日掃除をしている時に、廊下に赤いクレヨンが落ちていたので拾ったのよ。あなたが言っているのとまったく同じ場所で」 

もしかして、知らない間に近所の子供が来たのかと考えたが、それならば落書きがあるはずだ。しかし、ない。夫婦は不気味な話だと話した。

怖くなった二人は、何時もクレヨンが落ちている周辺を調べることにした。改めて家の図面を片手に廊下を調べてみると明らかに間取りがおかしいことに気づいた。家の図面を見ても、外見を見てもこの家にはもう一部屋、あるはずなのだ。

その部屋があるべき場所というのが、例のクレヨンが落ちている廊下のすぐ前だった。

二人が問題の場所の壁を叩くと、そこだけ明らかに他と音が違う。空洞がある、そういった音だった。

――夫が壁紙をはがしてみると、そこには、念入りに釘打ちされた引き戸が隠されていた。

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