68.『上賀茂愛梨の悩み その捌』 ページ23
「それは、貴方の傲慢なエゴです」
睨みつけていた安室は、口を開いた。
こういう時に相手に感情をぶつけてはいけない。これは、この職業に就いてよく学んだことで、そして何より、あの人が信条としていたから。
――正論を言え。
自分の中で、誰かが強くそう言っている。
男は、エゴという言葉に反応して、愛梨に注いでいた瞳を、安室にやっと視線を向けた。
「エゴ?人間みんな、エゴの塊だろう?」
男は酷く歪んだ、キレイな笑みを浮かべた。
「それでも、貴方のやっていることは、常識の範疇を越えています。法を侵しています」
淡々と安室は男に言葉を投げる。男は安室とは距離を保ったまま、その笑顔を貼り付けたまま、高らかに笑う。
「法?常識?それは、人間が作った規定概念。
言わば、
――真理ではない」
言い方が、まるで文学的だ。
安室も愛梨も、そう思った。次に口を開こうとしたとき、男の背後から、見えた人影に目を丸くした。
「真理でなくとも、それは決まられていることです。
法を守れない、常識を捉えることのできない人間に、いえ、倫理観のない人間に、
――真理を語る資格はありません」
息切れと共に、吐き出された言葉。
小さな少年に手を引かれ、それを離して、息を整える姿。小さな名探偵に、無理するからと苦笑いを浮かべられ、うるさいと彼女は返した。
「そうは思いませんか、宮林先生」
そう言って顔を上げたのは、ポアロで残るはずの海月だった。
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黒井蜜柑(プロフ) - 花枝さん» ありがとうございます!本当に、長らくお待たせしてすいません!週一掲載で続けていけたらいいなと思っていますので、なるべく終了まで更新停滞がないようにがんばります! (2021年5月24日 14時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
花枝 - お待ちしておりました!おかえりなさい、これからも応援しています! (2021年5月23日 23時) (レス) id: 43f2320b1e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - きゃろさん» すいません、長らくおまたせしました!本当に更新停滞気味が多くてすいません。なるべく早くは続きを挙げたいと思いますのでもう暫くお待ちください。 (2021年4月29日 7時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
きゃろ(プロフ) - おかえりなさいです!続きが更新されてるのが嬉しくて感想を書いてしまいました!続き楽しみにしています。 (2021年4月29日 2時) (レス) id: d6911c13cc (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 藤崎さん» 全然大丈夫です!期待に添えれるように、頑張っていきます。本当ゆっくりし過ぎですいません。 (2019年3月22日 23時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2019年2月14日 16時