【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

66.『上賀茂愛梨の悩み　その陸』 ページ21

あの一件から、愛梨は私の家に一時退避となり、大学までは私が、大学からポアロまでは彼女の友人が、ポアロから私の家までは安室が付き添うことになった。

一言言えば、一番危険なのは私の家から大学までだ。理由は簡単である。私は戦力にならない、以上だ。運動神経は臍の緒と一緒に切り捨てられてきたからな。

警察からの報告はまだ、無い。

そして、愛梨のストーカー事件は、いつの間にか、コナンや蘭ちゃん、毛利探偵を巻き込んでいた。何故。

「コナンくん」

私は、パソコンを見て、眼を細める。安室護衛週間から四週目。奴は尻尾を出した。

私の仕事は裏方だ。実働は、探偵達だ。

「いたの！？」

コナンはパソコンを覗き込む。そして、眉を顰めた。私はある一点を指差す。

「頼めるかな」

私がそう言うと、コナンは意地の悪そうに口角をあげて、こちらを見る。

「元よりそのつもりでしょ。海月先生、小1にも負けるくらいだから」

前に少年探偵団達に死にかけたことを思い出し、頭に強い衝撃を食らった気分になる。

「返す言葉も無い」

私の言葉にコナンは小さく笑って、すぐに真剣な顔つきになる。

「じゃあ、サポートよろしくね」

コナンくんがにこやかに私の肩を叩く。その笑顔が、悪魔の微笑みにしか見えない。

「寧ろ、叩き込まされたことに関して、同情をくれ」

コナンはそれに対して、無邪気に笑う。

「向いてるんだからいいんじゃない？」

「何それ」

この愛梨の見張りのような真似。これは、元から私が出来たわけではない。全て安室に叩き込まれたものだ。警察に丸投げを決め込んでいた私に、安室はドローンの操縦と、映像チェックなどの、普通に生きていていつ使うのかわからない力を叩き込んできた。

私は映る犯人に眉をひそめた。そして、コナンを手招く。

｢コナンくん、この人、私知ってるよ」

犯人を特定させる為、安室と愛梨には決まった道を歩いてもらい、飛ばす許可を取ったカメラ付きのドローンで追跡させる。

｢え、本当？」

それに悪のりしたコナンが、あれやこれやと変な入れ知恵をしてきたのだ。おかげで、ストーカー系のネタが浮かんだよ、次の話で書いてやるよ。

コナンは目を丸くする。私はそのまま彼に耳打ちをした。数週間前のその余裕は、それか。

｢気をつけろよ、君、無茶ばっかりするって聞いたから」

私がそう言えば、コナンは目を泳がせて、そして、強く頷いてポアロの扉から出て行った。

ちなみに、今日は定休日だ。

67.『上賀茂愛梨の悩み　その漆』→←65.『上賀茂愛梨の悩み　その伍』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す