実践 3 ページ11
「え、モノクロ?」
「そうだ。本当にそいつが人間かどうか分からなかったのか?」
男の姿が蜃気楼のように揺らぎ、さっきまで見ていたモニター頭で白と黒に分かれたスーツを着たあの姿に変化した。
「これで分かるか? 俺だって」
「……うん」
「いろいろ言いたいことはあるが、慌てすぎなんだよ、とにかく落ち着け。まず落ち着いて考えろ」
「はい、分かりました……」
「本当に分かったのか?」
怪しむような顔でモノクロが俺のことを見る。そして、探るような感じでコード1本だけを伸ばして俺の体をつついた。
「分かってる、分かってるよ! 次は気を付けるからさ」
「気を付けろよ。次は死ぬかもしれないからな。人間は弱いが、殺ろうと思えば神様だって殺せる生き物だ。人間だからって油断してると死ぬぞ」
「……うん、分かったって」
話している間もツンツンと体のあちこちをコードがつついていて、ふわっと弱くつついたと思ったら、皮膚を突き破るんじゃないかってくらい強くつついてきたりをずっと繰り返していた。
「よし、じゃあ人間がたくさんいるとこに行くぞ」
そう言ってモノクロが歩き出したがコードはまだ俺をつついている。
「あ、ちょっと待って」
「なんだよ」
モノクロは立ち止まって、俺の方を見る。口には出してないけど、早くしろよって顔をしている。
「あの、これ。つつくのやめてくれます?」
しばらくの沈黙。
モノクロは何かを考えていたがすぐにハッとした顔になって、つついていたコードを引っ込めた。
「これでいいか?」
「あ、うん。……もしかして忘れてた?」
「いや、違う。何故かこいつだけが勝手に動くことがある」
「自分の体の一部なのに?」
嫌そうな顔。
「黙れ」
「でも」
モノクロの姿が蜃気楼のように揺らぎ、先程と同じ人間の姿に変わる。
「ほら、お前も。人間に化けるくらいできるだろ」
話を逸らされた。
「あぁ、うん」
自分自身に力を集中させる。すると一瞬ふわりと宙に浮くような感じがしたので、成功したはずだ。
自分は出来ないことだらけだが、それくらいならできる。
だって人間のふりして町まで行って赤ん坊盗ってきたし、もしもの時のためこれだけはできるようにって姉ちゃんがやり方教えてくれたから大丈夫なはず。
「ほら、どう?」
モノクロは無言で頭のてっぺんから足先までをじろじろと見ていた。そして小さくうなずき、口を開いた。
「……まぁ、いいだろう」
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凪 - ネタ帳からきました。待ってやっぱりモノクロ好っきぃ!!! (2021年12月25日 21時) (レス) id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)
ふな(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!更新頑張って下さい! (2021年7月24日 20時) (レス) id: eed263cb5f (このIDを非表示/違反報告)
Cry cry - 続きが楽しみです。がんばりんごー! (2021年6月22日 16時) (レス) id: 72089608d6 (このIDを非表示/違反報告)
ソウルズ(カービィ)LOVE(プロフ) - ワーッ!(?)どうも!はじめまして!読ませて頂きましたが、すんごく面白いです!頑張って下さい!応援してます! (2021年6月18日 21時) (レス) id: 604407214b (このIDを非表示/違反報告)
まきぴろん(プロフ) - 遅れてごめんなさい(汗)完成しました!!ありがとうございました。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 24af0dff4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2020年11月2日 14時