やっと話せた sh #16

#12 ページ13

※巨Side※




「ねぇ 同じものって言ってたけど彼女 何杯目？」

バーテンに尋ねると2杯目という

3杯目を俺に止められらしい


「飲めないのに無理したんだAちゃん」


両手で頬杖をつきトロンとした目からは
今にも涙がこぼれそうだった


「部屋まで送ってくから もう帰ろう？」

『……』

「Aちゃん？」


瞼を閉じた彼女の頬には零れた涙の跡があった

「寝てるよね？」

「寝てますね･･･お疲れになったんでしょうね」

「Aちゃん 起きて部屋に戻ろ？明日もキャンプだよ」

『はいっ』

キャンプのワードにふにゃっと起き上がった彼女は立つことができないほど足にきていた

『あれっ おかしいな･･･』

「ほらっ つかまって」

『テラスで休んでから帰るから巨くんは明日キャンプだから早く帰って』

「だーめ！Aちゃんも帰るの俺と」

『俺と？？』

「そう俺と」

彼女の腕を掴んで背中におぶった

『えーーっ 巨くん重いからおろして』

「だーめ！大丈夫だよ鍛えてるから 俺、プロ野球選手だよ？知らないの？

『し、知っています』

「でしょ？だからケガしないようにジッとしてて掴まっててくれる？」

『はい』

「うん いい返事だね 行こうか」

会話も ふにゃふにゃでかわいくておもしろい
こんな酔っ払いなら歓迎だよ

　
『巨くんの背中･･あったかい いつも見てる巨くんのまんま』

うにゅうにゅ言ってからこつんと頭に彼女の頬がくっついた

(寝ちゃったか・･)

カードキーをかざし俺は初めてAちゃんの部屋に入った

シーツをはいで彼女をベッドにおろすと

ワインで汚したワンピースがゴミ箱に押し込められていた

別のスタンドの灯りをつけると部屋には俺の背番号のユニフォームがかけられていて

ホームとビジターと両方 よく見るとホームの白にはチケットホルダーに

開幕投手と書かれたハガキが入れられていて

胸が熱くなる


カサッとシーツの動く音がすると

『･･･っ ここどこ？』

酔いの醒めない彼女が目をあけた


「Aちゃんの部屋だよ ごめんね勝手に入っちゃって 大丈夫？」

『巨くんに迷惑かけちゃったんだ どーしよ私･･･』

起き上がろうとして脚をとられ ふらつく彼女を
抱きとめベッドに倒れこんだ


今のはわざとだ…


『巨く‥ん？…』

「少しこのままいたい」

『うん…』


スースーと寝息がする

(この状況で寝ちゃうか…)



今日のAちゃん カッコ良かったよ



ﾁﾕｯ



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