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「……ありがとうございます。それじゃあ取り敢えずここでお預かりしてますね」
粗方状況を伝えるとお巡りさんはにっこり笑って無線でパトロールに出ている他のお巡りさんにも伝えているようだった。
私の隣の椅子にちょこんと座る女の子。
お巡りさんから貰ったジュースを持って、今は落ち着いているが、私が立ち上がると不安そうな表情で口を開いた。
「お姉ちゃん、帰っちゃう?」
うるうるとした目に、そう尋ねられぐっと黙ってしまう。
本当は夜勤明けだから眠たいのも事実。
だけど、この子が心配じゃないのかと聞かれたら心配だ。
この子も、ここで1人待つのは嫌なのだろう。
何も言わないが、じーっと見つめてくる瞳が帰らないでと訴えかけて来るので、私は立ち上がった椅子にまた座った。
お巡りさんは無線を終えたのか、私を見ると不思議そうに首を傾げた。
『すいません、なんか私も心配になっちゃって…ここで一緒に待っててもいいですか?』
そう尋ねるとお巡りさんはにっこりと笑ってどうぞ、と言ってくれた。
椅子に座りながら女の子と色んな話をしたり、お巡りさんから貰ったいらない紙を借りてお絵描きをして時間を潰した。
お巡りさんはデスクで仕事しながらも、時々こちらをちらりと見て、私と女の子のやり取りを見ると可笑しそうに頬を緩ませてはまた、仕事をする繰り返しだった。
しばらく遊んでいた時だった。
女の子の母親と見られる人が迎えに来て、女の子は嬉しそうに飛び出して行った。
不安そうな表情で寂しい思いさせてごめんね、と謝る母親に対して女の子は「お姉さんとお巡りさんいたから寂しくなかったよ!」とニコニコしていた。
親子に何度も頭を下げられ、仲良さそうに手を繋ぎながら歩く2人の後ろ姿を見て、もう手離しちゃダメだよ、と心の中で思う。
『すいません、長居させてもらって…』
「こちらこそ。お姉さんいてくれて助かりました」
そう言って少し照れながら「子どもの扱いには慣れてなくて」と頬をかくお巡りさん。
何でも軽々とこなしてしまいそうなのに、その少し情けない表情が少し可愛らしかった。
頭を下げ、交番を後にする。
この日からだった。
お巡りさんとの関係は。
日勤明けの仕事終わり。
丁度帰宅ラッシュと重なってしまい、満員電車の中帰るハメになってしまった。
仕方ないとなるべく扉近くに寄って立っていると、腰のあたりに違和感を感じる。
何だろう…そう思ったのもつかの間だった。
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ヨウ(プロフ) - ななみさん» そう言っていただけて良かったですー!また続編の方にも遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月25日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キュンキュンしちゃいました〜!すっごく読みやすい文章で大好きです!ありがとうございます! (2019年6月20日 22時) (レス) id: d77610da69 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - なぁさん» いつもありがとうございます!中村先輩、まだキャラがブレブレで申し訳ないです…続編頑張りますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます!寛太先生続編書かせていただきました!期待に添えたものではなかったら申し訳ありません…また遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストにお答え出来るようなお話書けるか分かりませんが…はたらくおにいさん。の橙くんはツンツンキャラが多かったので頑張ってみますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨウ | 作成日時:2019年4月21日 1時