検索窓
今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:107,368 hit

ページ6

久しぶりに見かけたその姿に、何故か少し小走りになってしまう。

『あの、』

何と声かけようか、と迷っていたが、意外にもあっさりと第一声が出た。
ばっと驚いたように振り向いた鈴木さん。
声を掛けたのが私だと分かると、強ばらせた肩がすっと降ろされた。

「あ、どうも…」

…やっぱり素っ気ない…
何を期待してたんだ私。なんて馬鹿なこと考えていたらふと気付いた。
鈴木さんが抱えたダンボール。

『どうしたんですか?』
「……子猫が」

そのダンボールを覗き込むと、小さな白と黒の配色の子猫が1匹。もしかして。

『捨てられてたんですか?』

そう尋ねると、鈴木さんはゆっくりこくんと頷いた。

「ここに」
『そうなんだ…』
「俺は、一人暮らしだし、ペット飼えないから…」

そう言って寂しそうに猫を撫でる鈴木さん。
飼えない、そう分かっていても見つけてしまった以上手を差し伸べない訳には行かなかったのだろう。
そんな彼の優しい一面を垣間見た所で、私もその顔を見ていたら何とかしてやりたい、という気持ちになった。

『私、持って帰りますよ。ウチ戸建てだし、飼えなくても取り敢えずうちで預かって飼い主探せばいいし!』

そう答えると、目を見開く鈴木さん。

「いいんですか?」
『はい。ここにまた返すのも可哀想ですもんね』

そう答えると、鈴木さんはほっとした表情で子猫の頭を撫でた。

「良かったな、お前。優しい人いて」

そう言って猫を撫でる手つきは、すごく優しくて。
その表情を見ていたらドキドキしてしまった。
鈴木さんから猫が入ったダンボールを受け取る。

「ありがとうございます、本当に」
『いいえ』
「………」
『あの、』


気まずい雰囲気を壊したくて、声を掛けた。

『たまに、会いに来てくださいね』

そう言うと、少しびっくりした顔をしていたが、ふっと優しい、先程子猫に向けていた顔をすると。

「はい」

と柔らかく返事をする。



「会いに行きます。子猫にも、あなたにも」



今の聞き捨てならない言葉にパタリと止まる。
ゆっくりと顔を上げると、鈴木さんはこれ以上ないくらいに顔を真っ赤にしていた。


「いや、あの、その…!」

パタパタと慌てたように手を動かす彼を見て、何だかその姿が可愛くて。





『はい、お待ちしてます』






そう笑顔で返すと、鈴木さんの顔はどんどんと染まって行った。





それから、鈴木さんの下の名前を知って、ずっと私にぶっきらぼうだった理由を知ったのも、もう少し先のお話。

青×お巡りさん→←→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (111 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
273人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ヨウ(プロフ) - ななみさん» そう言っていただけて良かったですー!また続編の方にも遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月25日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キュンキュンしちゃいました〜!すっごく読みやすい文章で大好きです!ありがとうございます! (2019年6月20日 22時) (レス) id: d77610da69 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - なぁさん» いつもありがとうございます!中村先輩、まだキャラがブレブレで申し訳ないです…続編頑張りますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます!寛太先生続編書かせていただきました!期待に添えたものではなかったら申し訳ありません…また遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストにお答え出来るようなお話書けるか分かりませんが…はたらくおにいさん。の橙くんはツンツンキャラが多かったので頑張ってみますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヨウ | 作成日時:2019年4月21日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。