はたらくおにいさん。

寛×保育士2 ページ46

「良かったら、お友達から始めませんか…？」




その一言で、俺の人生が少し彩りを見せるはず、だった。
はぁ、と誰も見ていないのをいい事に思いっきりため息を吐く。
午前9時半。今日は遅番なのでこの時間の出勤。
ロッカーを開け、仕舞ってあったジャージに着替え、首にはホイッスルを掛ける。
25歳。男性保育士。俺。
保育士、と言うと女性の多い仕事だから出会いなんて沢山あるじゃん！と言われるが、所詮この世は女性社会。
出会えるもんなら出会えてる。
…………察して下さい。尻に敷かれてるんです。
そんな中出会ったウチのクラスの教え子のお姉さん。
ふわふわきらきらとした可愛さは、やはりこの現場で働く女性とはまた違った魅力があった。
もちろん、子どもたちと元気に過ごす保育士の女性も素敵だけどね。
でも何だろう、初めて出会った時から、あ、この人だ…と言う不思議な感覚に陥ったのだ。
もちろん、ウチのクラスの子供たちは感がいい＆ませてるのですぐに俺の反応が違うことに食いついてきた。
普段は「彼女いないかんた先生可哀想」と馬鹿にされるが、こんな時には必死になってくれる子供たちはやっぱり可愛いと思う。時々余計だけど。うん。


そして数ヶ月前、子供たちの後押しにより「お友達」と言う何ともチキンな立ち位置から始まった訳だが、始まった訳ではなかった。始まってもいなかった。
あれ以来、全くお迎えに来なくなった彼女。
明希ちゃん曰く、お姉ちゃんは忙しい、らしい。
こうなってしまってはどうすることも出来ない。
お友達どころかただの知り合い、いや見たことある人、程度になっていそうだ。



もう一度深い溜息を吐いてからロッカーを閉める。
取り敢えず、今日も一日頑張るか。
改めて気合を入れ直してロッカールームを出た。
俺が遅番の時は大体、朝は冨永先生がクラスに代わりに入っててくれてるはず。
そう思って自分のリュックを抱え直し、ゆっくりと自分のクラスへと入っていった。









「おはようございまー…」
「えー、それでは、かんた先生がこれから明希ちゃんのお姉さんを彼女にするにはどうしたらいいか、ひまわり組の皆に聞きたいと思います」
「「「「はーーい！」」」」



「す…え、冨永先生、何してるんですか？」



「お、かんた先生おはよう」
「おはようございます、じゃなくて！！！」

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