はたらくおにいさん。

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俯いたまま謝ると、そのまま無言の空間が漂う。
…とても、とても居ずらい！！
今の私は宛ら、蛇に睨まれたカエルだ…！！！
とにかく早く時間が過ぎないかと心の中で祈っていると、休憩室の扉が開く音がした。

「お疲れ〜。あ、友哉またやってんの？」

救世主！女神！吉野先輩！
吉野先輩はその独特な柔らかい笑みをふんわり浮かべてこちらを見た。
この私と中村先輩の雰囲気を直ぐに察したようだ。

「……別に」
「別に、じゃないでしょ。後輩虐めてさぁ」
「ちげぇし」

中村先輩はちっ、と小さく舌打ちをすると吉野先輩の横を通って休憩室を出ようとする。
その手をパッと吉野先輩が取ると、ネクタイ曲がってる、と優しい手つきで中村先輩の首元に手を伸ばした。
その様子をじっと見つめる私。
うーん、絵になる2人、だよなぁ…
そのままネクタイを直してもらった中村先輩は何も言わずに部屋を出ていってしまった。
吉野先輩は特に気にする様子もなく、友哉の後の休憩室、タバコ臭いんだよなぁ…と呟くと部屋の隅に置いてあったファブリーズをありったけ振り撒いていた。

『……先輩、ありがとうございます』
「ん？いいえ〜。まぁ何度も繰り返されちゃうのは困るけど、人間だしね。私らがフォローするから気にしないでよ」

私は今中村先輩から助けて貰ったことを言ったのだが、吉野先輩にとってそれはどうでも良いことだったみたいだ。


部屋の中央にあるテーブルに仕舞われたパイプ椅子をガタガタと引くと吉野先輩はよいしょーなんて、顔に似合わずそんな言葉を吐き出しながら深く腰掛けた。

『……先輩』
「んー？」

先輩はスマホをポチポチ弄りながら軽く返事をする。
目線は全く向けてくれない…まぁ良いんだけど。


『私、中村先輩に嫌われてるんですかね？』


そう小さな声で尋ねると、パッとスマホに向けていた視線を私に寄越した。
その目は元々大きいのに、さらに見開かれている。

「……え？どした急に？」
『いや、…中村先輩、私に当たり強いから…』

多分、中村先輩は私のトロ臭いのが見てられないんだと思う。
中村先輩はテキパキと動ける人だから。
それに比べて私は…
ハッキリと言えず口をモゴモゴさせていると、吉野先輩がゆっくりと口を開いた。

「んーまぁ、友哉的には小学生的心理？みたいな？」
『……は？』
「あー、いや。そんな気にしなくていいと思うよ」

そう言うとまたあの独特なへらりとした笑みを浮かべた。

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