はたらくおにいさん。

緑×バーテンダー ページ31

夜も半ば過ぎた時間帯。
ある街の小さな通り道に構える小さな店。
俺はいつも通り店の制服に着替えると、扉を開け、そこに掛かる「CLOSE」の看板をひっくり返した。







金曜の深夜。
お客もそこそこ増えた頃。
また1人、この店の扉を開く音がする。



『とーしーみーつー！』


きた。厄介なのが。


「またおめぇかよ…」
『何よー！一応私今お客さんだから！！口には気を付けなさいっ！』


そう言ってドカリとカウンター席に座る女。
いつからか、うちの店の常連客になっていた女だ。
来る日も来る日も合コンに明け暮れ、上手くいかないと必ずここにやってくる。
…毎回愚痴を聞かされる俺の身にもなって欲しい…


「何飲む？」
『んーー、ソルティドッグ！』
「はいよ」


本当は聞かずともコイツのいつも飲むカクテルは分かるんだけど、何故かいつも確認してしまう。
グラスに氷を入れ、ウォッカとグレープフルーツジュースを注ぐ。
彼女はもう既に割と出来上がっているのか、その頬を染め頬杖を着きながら待っている。


「どうぞ」
『わーい！ありがとう！』


グラスを抱え飲み始めるコイツ。
ジャズが流れる店内では、そこかしこでお客が酒を楽しんでいる。


「で？今日はどうだったんだ？」
『ダメダメのダメー！！大ハズレ！！』


さっきまでの落ち込み様はどこいったのか、きゃはー！と楽しそうな声を上げ今日の話を報告し始めた。


『うーん、顔は良かったんだけど、話は盛り上がらないし、正直つまんなかった！』
「ほー…」
『一応連絡先はゲットしたけどね！』
「抜かりねぇなぁ、お前」


そう呆れて声を出すと、Aがグラスを掲げながらピースサインを見せてくる。
あー、うぜぇうぜぇ。


『勿論、男はお金も顔も大事だけどさぁ？やっぱり一緒にいて楽しくないとダメだよねぇ…』
「………お前でも一応そう言うポリシー？は持ってたんだな」
『としみつ、ちょっと私の事下手に見すぎじゃない？』


まじ失礼ー！と言いながらもケラケラと楽しそうに笑っている。
おーおー、随分酒が回っているようだ。

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