はたらくおにいさん。

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褒められた…
先輩に褒められた！！！！
それだけで嬉しくて頑張って良かったー！と胸を撫で下ろす。
よし、この勢いで溜まってる仕事も終わらせちゃお！




時刻は19時を過ぎた頃。
ぞろぞろと仕事を終えた同僚達が帰っていく。
私の向かいのデスクの先輩も立ち上がり、帰りの支度をしている。


「あれ、A。帰らんの？」
『あ、まだ終わってない仕事残ってて…』


そう伝えると、先輩はちら、とこっちを見て ふーーんと言う。
も、もしかして先輩、手伝ってくれたりなんか…！？






「じゃ、僕帰るから。お疲れ」





そんな期待も虚しく、先輩は鞄を持つとヒラリと手を振り返っていく。
………うん。人生そんな甘くないよね。
取り敢えず、ちゃっちゃと終わらせちゃお。
私はひとつ背伸びをすると、また目の前のパソコンと向き合った。









『終わったーーーー！！！』

やっと抱えていた仕事を全て片付けられた。
時刻はもう少しで22時になりそう。
先程までは何人か他にも残業している人がいたが、いつの間にかいなくなっていた。
荷物をまとめ、部屋の電気を消し、鍵を閉めてエレベーターで降りる。
帰りに警備室に寄って鍵を返し、会社のエントランスに出たところだった。
玄関前の植え込みに座る、見覚えのある姿。
まさかと思って近づくと…




『……先輩！？』
「お前、遅すぎ」


そこにはムッとした表情の先輩がいた。
先輩の手には口の空いた缶コーヒーがひとつ。
そして、


「お疲れ」


差し出されたのは、まだ未開封の缶コーヒー。


『え、あ、…ありがとうございます』
「…帰るよ」
『って、え？私のこと待っててくれてたんですか！？』

いつも意地悪な先輩の意外な行動に目を丸くしていると、先輩はぷいっと顔をそむけて
「そんなんやないし…」
と早歩きで行ってしまった。


その小さな背中を追いかける。


『先輩！待ってくださいよ！』
「……待たん」
『なんで！？こんな時間まで待っててくれたのに！』
「……」
『無視しないで先輩！』


急いで隣に行き、肩を並べて帰る。


『先輩、ラーメン食べて帰りません？』
「……食べない」
『待っててもらったんで、奢ります！』
「行く」
『……現金だなぁ…』


いつもは頼りになる先輩だけど、今だけはなんだか可愛らしく見えた。
そんなこと、本人に言ったら絶対怒るけど。

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