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『好き…じゃ、ないんです…』
消えそうな小さい声でそう答えると、店員さんは思わぬ返答だったのか目を丸くさせると何と言えばいいのか迷ってしまったようで口をもごもごとさせる。
『……つい、先日、別れた彼氏との、思い出の作品で…2人でよく見てたから…』
そこまで言って悲しさが込み上げてきてしまい、涙が出そうになる。
ああ、何してるんだろ私。
店員さん困らせて…
特に会話が続かず無言の時間が流れて、付き合わせたことに申し訳なくなってしまい、早くこれを借りて帰ろうとすると、持っていたDVDをぱっと抜き取られた。
驚いて顔を上げると、店員さんがそのDVDを棚に戻していて。
唖然とその姿を見届けると店員さんはこちらをくるりと向いた。
「俺、あの作品好きなんですけど、お姉さんが悲しい思いしちゃうなら、貸せないです」
そう言われて何も言えず立ち尽くしていると、今度はぱっと手を取りて他のコーナーに連れていかれた。
どうすればいいのか分からずそのまま付いていくと、あるコーナーの前に止まり、その棚から1本のDVDを引き抜いた。
「これ、俺のおすすめなんですけど、良かったらこれ借りていきませんか?」
突然のおすすめに固まっていると、店員さんは慌てたように。
「あ、急にすいません!!ただ、あの作品見てお姉さんが辛い思いするくらいなら、俺のおすすめ見て少しでも楽しんで貰えたらなって…」
そう言う店員さんの声はどんどんと小さくなり、顔を見ると少しだけ赤らんでいる。
「よ、余計なこと、してすいません…」
何も言わない私が、その態度を気に食わないと思ったのかDVDをそっと棚に戻そうとしたのでそれを止めた。
『いえ、まさか選んでもらえるなんて思わなくて…ありがとうございます!それ借りてもいいですか?』
そう尋ねると、店員さんは嬉しそうに笑ってくれた。
一緒にカウンターまで行き、お会計をする。
その間に店員さんの名札をちらりと見ると、……よ、読めない。
すごく難しい苗字だ。
私が凝視していたのに気付いたのか、照れ臭そうに笑って「読めないですよね」と言ってくれた。
『なんて読むんですか?』
そう尋ねると、少し口を開いた店員はまた口を閉じた。
不思議に思っていると。
「次会う時までに調べてきてください。宿題、です」
なんて、言われてしまった。
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ヨウ(プロフ) - ななみさん» そう言っていただけて良かったですー!また続編の方にも遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月25日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キュンキュンしちゃいました〜!すっごく読みやすい文章で大好きです!ありがとうございます! (2019年6月20日 22時) (レス) id: d77610da69 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - なぁさん» いつもありがとうございます!中村先輩、まだキャラがブレブレで申し訳ないです…続編頑張りますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます!寛太先生続編書かせていただきました!期待に添えたものではなかったら申し訳ありません…また遊びに来ていただけると嬉しいです! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストにお答え出来るようなお話書けるか分かりませんが…はたらくおにいさん。の橙くんはツンツンキャラが多かったので頑張ってみますね! (2019年6月20日 21時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨウ | 作成日時:2019年4月21日 1時