不要品回収（紫)

反則技 ページ22

10時の開店と同時に、デパ地下で章ちゃんへのお土産をゲットし、そのまま新幹線に乗り込んだ。


お昼過ぎには２ヶ月ぶりの我が家に帰り着き、淀んだ空気を入れ替えてながら、洗濯機を回して、布団を干して、掃除機をかけて、と家事に没頭した。


そうして、いつも通りの空気を取り戻した部屋で一息つけば、帰ってきたんだなぁ…とやっと実感する。


現実逃避はもう、終わり。


おかえり、自分。

ただいま、現実。


よく頑張ったと褒めるべきか、

そろそろ観念しろと諭すべきか。



自分を忙しさの中に追い込んだこの２ヶ月は、あたしから余計な思考も感情も、取っ払ってくれた。


そして残ったのは、至極シンプルなキモチ。



ーーさて、このキモチをひっそりと温めるのか、ぶつけて壊すのか…









買い物へ行って冷蔵庫を満たし、適度に食卓が彩られた頃に、インターフォンが鳴った。


「お疲れさま〜」


玄関のドアを開ければ、マイナスイオンたっぷりの章ちゃんの笑顔。


「お酒、いっぱい買うてきたでぇ〜」


両手にはレジ袋いっぱいのアルコールらしき缶やら瓶やら…


「今日は朝まで飲むつもり？」


いくらお酒に強いあたし達でも、流石にこれは買いすぎでしょう。


呆れながら笑って言ったのに、返ってきたのはひどく真剣な声だった。






「ーーもう一人連れてきたんやけど、ええ？」



どこかで見たようなシチュエーション。









ねぇ、待ってよ章ちゃん。




これはちょっと、反則技じゃありませんか…？









「ーーA…」






その声で、名前を呼ばれたのは何ヶ月ぶりだろう…

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