幽霊さんと暮らした一夏に。

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涼「…っていうか、リョーちゃん！？」


慧「ネーミングセンス良すぎないか〜？」




午後の授業も終わったようで。


時の流れが早く感じる日だった。



先生だと名乗る人とリョースケが話を終え、今まさにリョースケの家へと向かっている。



涼「あっついぃ…。」



そういうリョースケの隣で涼しげな顔をして歩く僕たち。


「まぁ、それを感じられるのも生きてる証拠ってことだよ。幽霊には暑さなんか分かんないもん。」


慧「いいよーなー？悪いよーな？」


涼「そうなんですか…。」



ふわっと風が吹き抜けては髪を揺らす。


勿論、僕でもイノちゃんでもない。


どうも僕が気になっている人間の。



涼「もうすぐ着きますよ。」


慧「え？近いの？」


涼「…何分歩いたと思ってるんですか！？一時間ですよ！？」



一軒家。少し古びた表札には山田と記されている。



ガチャッという鍵の音と、ドアを開け感じたもの。



「…ねぇリョースケ。」


涼「はい？」


「近々誰か…その……亡くなった…？」


涼「…あー…。」


慧「きっと優しくて…素敵な人なんだね。」




人の気持ちを感じる。温かくて。輝いていて。


幽霊には、気温などの人間にはわかる温度は感じない。


だけど、その分。人の気持ちについては、温かいだの冷たいだの判断できる。



涼「……最近じゃないんです。何年も前のこの時期でした。…さぁ、上がってください。」



風鈴の音。畳の感触。蝉の鳴き声。


何回も過ごした夏だけど、久しぶりに風情を感じる。



慧「…ご両親は…？」



涼「ずっと帰って来ないんです。仕事で。…だから幽霊さんたちのお陰で寂しくないかもしれないです。」



そう笑った。



「僕がいるだけで楽しくなっちゃうもんね。」


慧「俺がいるから楽しんだよー？」



机に置かれた薬の山。学校からの手紙。



イノちゃんもきっと気づいている。



涼「あっ、洗濯物。」


階段を上がるリョースケに続き二階へ。


使われていないであろう部屋。埃の被ったアルバム。



ベランダへ出たリョースケを二人後ろから眺めた。



慧「…ずっと一人だったのかな…？だからあの時…」


「僕たち、今日リョースケに会えてよかったね。」



慧「そうだね。」



きっと近々、


背伸びをしながら洗濯物を取り込んでいる少年の前に



もう一人の幽霊が現れるだろう。





涼「…また夏が来ちゃった。」




そんなリョースケの声が微かに聞こえた。

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