肆、蚊取り線香 ページ11
in side
「えっ…!ちょっ!リョーちゃん!?」
側には割れたコップの破片。
触らないものだから声をかけるしか方法はなくて。
涼「…ッ…ふっ…。」
時折苦しそうな表情を見せていて。
落ち着いた頃には時は十分に過ぎていた。
フラフラとまだ頼りない様子で身体を起こした。
涼「…あっ、えへへっ、なんかみっともない姿見せちゃいましたね。すみません。」
「もう大丈夫なの…?」
涼「はい。よくあることなので。…あー。また割れちゃった。」
そんな声を落としたあと、立ち上がり塵取りを持っては片付けていた。
侑「…ねぇ、イノちゃん。あの人は?」
「えっ?…あれ?」
すっかり忘れていたけれど、
このときダイちゃんの姿はなかった。
侑「…っていうかリョースケ止血…!」
もう乾いていたけれど消毒液を垂らし包帯を巻く。
「…でもどうして倒れてたの…?」
涼「ちょっと頭痛くなっちゃって。時々あるんです。急にズキって。…病院に行ったんですけど、何の異常もないみたいで。」
少し口角を上げて笑いこちらを覗く瞳は、
なんとなく全てを察したような目をしていて。
侑「…リョースケに言ったっけ?」
「…待って…言うつもりなの?」
次に出す言葉は分かっている。
侑「イノちゃんだって分かってるでしょ…?」
涼「……あの…。」
この家に来たときのことを思い出す。
もしその予想が当たっているのだとしたら。
もし、この少年の前に幽霊が現れるとしたら。
「リョーちゃん。……覚悟はある…?」
急にこんなことって思ったのなら言うのはやめた。
だけど、
涼「……大丈夫です。……毎回この時期だなんて、おかしいと思ってたんです。」
恐らくその頭痛の正体は、俺たちと同じ幽霊で。
その幽霊がもつ能力は、
人の体調に害を為す部類。
大概がそうなのだけれど。
だから近づきたいのに近づけない。
会いたいのに会えないんだ。
涼「……幼なじみでした。……知ってますか…?」
蚊取り線香が運ぶ夏の香りに嗅覚が包まれる。
まだ覚えているんだ。この香りは。
涼「…アリオカダイキ。」
ドクんと胸が波を打つ。
____
俺、結構小さいときに死んだんだ。
一人だけ会いたい奴がいるんだけど…会えなくてさ。
____
初めてダイちゃんと会ったときの会話が脳裏をよぎる。
「知ってるよ。」
近くて遠い二人の距離も。
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さき(プロフ) - ciaociaoさん» コメントありがとうございます……!削除する予定なのは謝罪のページのみなので、大変お待たせしてしまいましたが今後も更新させていただきます(>_<)紛らわしい書き方をしてしまい申し訳ないです。お気持ちとても嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (8月4日 11時) (レス) @page29 id: 7b1fe2d542 (このIDを非表示/違反報告)
ciaociao(プロフ) - Twitterにおしらせいただいたので、久しぶりに読ませていただきました。もう続きを投稿いただけないとのことで残念です、、お気持ち変わりませんでしょうか、、 (8月4日 7時) (レス) @page29 id: 33ff52010d (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - めいめいさん» わぁぁ!ありがとうございます!返信遅くなってしまい申し訳ございません……また近々更新します! (2022年6月5日 0時) (レス) id: 7b1fe2d542 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - いつも読ませてもらってます。更新楽しみにしてます!!! (2022年5月19日 21時) (レス) @page27 id: 3da430cefd (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 桃大福さん» 返信遅くなってしまいすみません…。そういっていただけるとモチベーション凄くあがります!!ありがとうございます! (2021年3月11日 13時) (レス) id: 7b1fe2d542 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さき | 作成日時:2020年8月8日 1時