犬系女子と飼い主系男子【梵天】

はるち ページ4

.







その時、バァンと乱暴に扉が開け放たれた。






三途「A〜このドブス
どんだけ探し回ったと思ってんだぁ？」


『ひっ、はるち、……』






ゆらりと覚束ない足取りで近づいてくるのは、
この犯罪組織のNo.2である三途春千夜だ。



ぶつぶつと意味不明な言葉を呟く様子は、
完全に薬の影響である。



不気味な引きつった笑い声に、
その場にいた幹部たちが
慣れたように席から立ち上がる。






竜胆「やべ、アイツまた飛んでんな。逃げろ兄貴」


蘭「おーい三途〜、戻ってこーい。

……あ、忘れてた。A逃げらんねーわ」






鎖に繋がれたままの私はその場から動けず、
ふらふら近づいてくる三途に恐れ慄く。



いざとなったらこれで抵抗しようと
スプーンを握りしめるが、

そんな私は雪崩かかるように
長い腕に抱き締められた。






三途「次逃げたら俺がぶっ殺す、」


『わか、わかったからちょっと離して！』


三途「あ？ぜってーやだわ」


『息が出来ないから苦しいよ』


三途「はあ、くっそ可愛い」


『今くそって言った？』


竜胆「何でそこしか聞こえねーんだよ」






とんとんと背中を叩いてあやしていると、
どうやら正気を取り戻しつつある三途にほっとする。


どうしようもないやつだ、ほんとに。



三途が薬漬けにならずに済んでいるのは
Aがストッパーになっているからだと、
当の本人は知らない。







.

王様の指名→←鎖をつけられ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す